質問
 首都圏で訪問看護ステーションに勤めています。スタッフ持ち回りで夜間のオンコールに対応しているのですが、最近、私以外のスタッフが入れ替わったため、管理者と私しかオンコール電話を持たなくなりました。しかも、なぜだか私がオンコール当番の日に限ってやたらと電話が多く、出動することもしばしば。とても不満です。

回答者
坪内紀子(おんびっと[株]代表取締役)


 病院に勤めていた頃、次のような経験はありませんでしたか?

 ある特定のメンバーが多く勤務していた日勤帯の後の夜勤で、やたらとナースコールが多かったり、ある特定メンバーが多かった夜勤の後の日勤帯で、朝の申し送りがままならないほどナースコールが鳴り響いたり……。

 私自身にはそのような経験が多々あります。ある時、入院患者からの一言でそれが何だか気付きました。「○○さんが勤務している時は、ナースコールを押せないんだよね……」。そうです。入院患者に遠慮や気遣いを抱かせてしまうナースが存在するのです。私の分析では、そういうナースには次のような特徴がありました。

 ● 今でいうクールビューティ(決して、見た目が美しくないナースの勤務後には、ナースコールは鳴り響きませんでした)
 ●業務は完全にこなすがあくまでも事務的
 ●そのナースの笑顔を勤務中あまり見たことがない(特に、検温中は。ただし飲み会などでは笑顔炸裂)
 ●業務にやり残しが多く、そのナースの勤務後は片付けから始まることが多い
 ●医者にもてている

 まずい!既に数名の顔が浮かんできました……。ここで私は、アーネスティン・ウィーデンバックの著書「臨床看護の本質」の一文を思い出します。

 「看護婦が看護を行うには患者を必要とするが、患者が必ずしも看護婦を必要としているとは限らない」(1995年翻訳版からの抜粋につき、呼称は古いものをそのまま転記)という一節なのですが、私はそれ以前のこととして、看護師を本当に必要としている患者がいるのにもかかわらず、「どうせあのナースに言っても通じないし」と患者に諦めの気持ちを抱かせているナースがいることに憂慮しています。病院での生活を余儀なくされている入院患者にとって、ナースの存在は多かれ少なかれ何らかの影響を与えます。であるならば、(すべての入院患者には無理だとしても)患者に遠慮や気兼ねだけはさせないようにする配慮が必要だと考えます。

 
 前置きが長くなりましたが、実は在宅の現場においても、同じようなことが結構起きているのではないでしょうか。

 前回記事で担当制に触れましたが、担当制の訪問看護ステーションで、ある利用者が自分の“担当”ナースに対して、遠慮や気遣いを抱いているとしたら……。非常によくない事態に陥っているということですよね。そして日中の“担当”ナースでは満たされない分、時間外、つまりオンコールのナースに利用者が要望や思いをぶつけるのは当然のことです。もし、利用者から「今日のオンコールは誰が当番かしら?」とちょくちょく聞かれているならば、それは利用者が発している何かのSOSのサインかもしれません。夜間に好き好んで何度も電話をかける人はいません。実は、“モンスター利用者”は私たち専門職が創り出している可能性が高いのです。