写真 訪問バッグの中身 感染症の伝播を防ぐため、爪切りや耳かき、はさみなどは携行しない。

パルスオキシメーターより観察力を!
 訪問用バッグとその中身については、訪問看護を行う上で必要最低限のものを会社で用意します。バッグは、3000円前後で汚れの目立たないものを選びました。血圧計や聴診器などはネット通販で購入すると意外と安価で済みますし、体温計はキャラクター付きのものを用意しました(写真)。メジャーは浮腫や腹水のある患者などの計測に使用します。

 アルコール綿は、体温計や聴診器などを使った後にふき取るために必要です。ケア終了後、患者宅で水道やせっけんを借りて手を洗いますが、手ふきは使い捨てのペーパーナプキンを使っています(アルコール綿やペーパータオルは、事業所に持ち帰り廃棄)。ディスポグローブは、用意のないお宅で取り急ぎ使用するために念のため持参していますが、常時使用しそうな場合は、患者さんに購入してもらっています。

 看護師が爪切りや耳かきなどを持ち歩いているステーションもあるようですが、大抵どの家庭にも常備してありますし、看護師自身が白癬などの感染症の伝播者になるわけにいかないので、私は携帯させません。はさみなども同様です。

 パルスオキシメーターをそろえたり、質問者の事業所のように衛生材料の在庫を山のように抱えるのが好きなステーションもあるようですが、置き場所の確保を考えると不要です。

 パルスオキシメーターに至っては、現在、医療除外行為としてヘルパーでも測定が可能です。必要な患者さんにはご自身で用意してもらえばいいのです。看護師が訪問した時だけ測定しても意味がありませんし、数値はあくまでも目安にしかなりません。それよりは看護師としての観察力を磨き、肺のエア入りや肺雑音の有無を聴取する方が重要でしょう。ネット通販を使えば、パルスオキシメーターは1万円以内で購入可能ですが、金額云々の話ではないのです。看護師自身の安心のために測定するのは本末転倒です。


つぼうち のりこ氏●1988年東京女子医大付属看護専門学校卒。同大付属病院、日本医大多摩永山病院などを経て、98年から訪問看護に従事。セントケア(株)訪問看護部次長、(株)ミレニア訪問看護サービス部長を務め、訪問看護事業所の立ち上げと運営・教育に携わる。2013年におんびっと(株)を設立。訪問看護ステーションへのコンサルティングや教育事業を手がけ、14年2月から訪問看護サービスをスタート。