質問
 所長が急に退職した訪問看護ステーションの管理者を任されました。事業所内を整理しようと思い戸棚を開けたところ、衛生材料の在庫が山のように積まれてあるのを見付け、うんざりしています。そもそも、ステーションではどの程度の備品をそろえておけばいいのでしょうか。

回答者
坪内紀子(おんびっと[株]代表取締役)


 私にも質問者と同じ経験があります。以前勤めていた会社で、ステーションを引き継いだ時のこと。観音開きの書庫に、衛生材料やもらい物の吸引チューブ、血糖測定器などが押し込まれていました。金額に換算すると30万円相当の在庫の山。すべて医療廃棄物として業者に引き上げてもらいました。会社の経費となると、山のように物品をそろえたがる悪しき習慣を持った看護師が、まだまだ世の中にいることが残念で仕方ありません。

 では、そもそも訪問看護ステーションでは、どの程度の備品が必要なのでしょうか。今回は、開設時に必要な備品について、コンプライアンス(法令順守)の観点から絶対になくてはならないものと、そうでないものとに区別して考えていきましょう。「開設マニュアル」の類いでも確認できますが、実際に読んでみると、無駄な物品が随分多く列挙されているなとの実感があります。

 まず、コンプライアンス上の必需品は以下の4点です。

1)鍵のかかる書庫。カルテをはじめ、個人情報保護の観点で必須です。ポイントは「鍵がかかる」ことです。事務機材でそろえてもいいですし、鍵が掛かれば家具調のものでも差し支えありません。大きさや容量などもさまざまですから、ここは予算との兼ね合いで決定するといいでしょう。中古の事務機が購入できる店舗もあります。

2)洗面所があることは前提です。それと手指消毒剤。指定申請の段階で感染に関する届け出がありますから、その基準に則れば大丈夫です。

3)電話機とFAX。事業所なので当たり前ですが、機種などの指定はありませんから、こちらも予算と相談です。

4)机と椅子。これは自分たちの仕事用のものと、相談室スペースに使用する机と椅子です(対面できるものが最低条件?)。こちらも、材質や大きさなどの指定はないので、予算に応じて考えます。

 ここからは任意になります。ポイントは、経営上、スタッフに対して「福利厚生の一環として『備品』扱いで会社で用意します」と言うか、「会社に準備はありませんから各自で用意してください」という立場をとるかです。私はもちろん、前者の立場をとっています。開業時、私が用意したのは以下の9点です。

■備品扱いで用意したもの■
1)洗濯機(ユニフォームを準備するか否かによっても変わりますが、当社では「持ち帰りの手間は最小限に」を心がけています)
2)電子レンジ、コーヒーメーカー、電気ケトル、掃除機、パソコン、プリンター(冷蔵庫は備え付けのものがあり購入していません)
3)掃除グッズ
4)ユニフォーム、靴下、ダウンコート、雨具、手袋
5)訪問用バッグセット(血圧計、聴診器、体温計、メジャー、ペーパーナプキン、手指消毒用アトマイザー、1包化されたアルコール綿、ディスポグローブ)
6)文房具(主に看護記録で使用するボールペン)、およびカルテ類に使用するファイルやクリアケース類
7)電動自転車
8)コップなどの食器や茶葉など
9)地図を数種類

 以上です。ユニフォームは用意しているところと指定していないところがあるようですが、例えば認知症などの患者さんで人の認識が困難であれば、「なんとなく同じような格好で毎回だれかが来ているな」程度の認識を持ってもらえる点で、ユニフォームは有用だと思っています。訪問先にはさまざまな住環境のお宅がありますから、靴下も準備しておく方が得策です。また、電車などの公共交通機関を利用するのに「ユニフォームを持ち帰ってください」とか、「自宅の洗濯機でユニフォームを洗濯してください」とは、私がスタッフだったら言われたくないので、事業所には洗濯機を備えています。