質問
 3年目の訪問看護師です。ここのところ、ターミナル患者さんの新規利用が多いのですが、皆さん、自宅に帰られてわずか数日で亡くなります。もう少し早く退院させてあげることはできないのかしら?

回答者
坪内紀子(おんびっと[株]代表取締役)


 先日とある病院に営業に伺った時のことです。看護相談室(退院に当たって色々と調整[?]する部署。病院によって呼称が異なるので、あえての注釈を付けます)の担当ナースが次のように言いました。

 「患者さんを自宅に帰すためには、ご家族に色々と指導が必要となるのですが、家族がなかなか来院されないので、結果的に帰せないんですよ……」

 患者さんが退院する際、病院では退院指導が行われていますが、これに関して私は正直、あまりいい印象を持っていません(あくまでも私見であるため、ご意見のある方はご連絡ください)。
 
 私が過去に経験した、「最悪極まりない」退院指導の例を紹介します。

 神経難病(特掲診療料の施設基準等・別表7の該当疾患)のため、入院を余儀なくされていた高齢の患者さんです。経口摂取がままならずに胃瘻(PEG)が造設されていました。介護者は80歳代のご主人のみですが、退院させたいとの強い希望があり、ケアマネジャーから「退院可能かどうか見てもらいたい」と依頼されました。

 入院先に出向くと、ラッキーなことにちょうど病棟ナースがPEGへ栄養剤を注入する時間でした。退院を希望している患者家族に対して、そのナース(おきれいな大柄なナースでした)が伝えたのは、「ここをこうして、こうすればいいですから」のみ……。

 私は絶句しました。ご主人の反応を確かめる様子もなく、時間にしてわずか3分ほどだったでしょうか?栄養剤を接続後、さっさとナースステーションに戻って行きました。私はとっさにご主人にこう言いました。「さっさと連れて帰りましょう〜」と。傍らにいたケアマネジャーはポカンとしていましたが。

 私が思わず患者家族にそのように告げたのは、次のような理由からです。

(1)「退院指導」という名の下、PEGからの注入という一連の行為を一方的に見せただけにすぎなかったから。
(2)患者(家族)に対して期待する成果や目標を掲げた退院指導にはなっていないと判断したため。
(3)自宅に戻った時の情景への配慮が欠けていた、というより「なかった」ため(例えば、病院であれば当たり前のようにそろっている消毒薬類は、通常、自宅にはありませんから、代替品の提示がいつでもできるくらいの配慮がほしいと思っています)。

 以上3点だけで、もうお腹一杯です……。医療保険による1日3回の訪問看護の提供が可能な疾患でしたから、自宅に1日も早く帰って頂き、ご主人のペースに合わせてじっくり関わろうと決意したため、つい出たセリフだったと記憶しています。