訪問看護が“甘い汁”を吸えるのはいつまで?
 このように現状では、24時間対応や退院支援など、ステーションの体制に対する評価(加算)は存在しますが、患者さんの重症度については、事実上、「管類が入っているか否か」しか基準が存在しません。「管類」と一言で言っても種類は様々。なぜ、尿道留置カテーテルのみの患者と気管切開をしていて人工呼吸器が装着されている患者が、同じ扱いなのか?私は不思議でなりません。

 ですが私は、訪問看護にも近い将来、病院の「看護必要度・重症度」に近い評価基準と、それと連動した報酬体系が必要になってくると常日頃考えています。理由は、訪問看護と訪問介護とを、明確に区別していく必要があるからです。もっと言うと、本当に訪問看護が必要か否かの判断を必須とし、適正な利用を促していかないと、この国の訪問看護の将来はあり得ないと考えているからです。

 中には、退院後3年経って手も動くし歩行も可能な患者に、至れり尽くせり(全面介助という意味)で入浴介助を行うためだけに訪問看護を行っているような現状すらあります。退院直後ならまだしも、3年も経っている患者であり、本来なら訪問看護でなくヘルパーで十分対応可能なケースです。ましてや全面介助というのは、自立を促すことを謳っている介護保険法の基本理念にそもそも一致しません。手足の動く患者に、ヘルパーよりも高コストの看護師が、介護保険法を無視するかのごとく入浴介助するだなんて……。

 この患者は、近隣のとある訪問看護ステーションが廃止になり、ケースを引き継ぐため関わることになったのですが、それまでの訪問看護の利用状況を知って、「ドリフのコントかぁ!!」(昔懐かしのもしもシリーズ)と本気で思いました。その後、担当のケアマネジャーに依頼して、この患者のケアプランを、全面介助から一部介助の“スパルタ入浴”へと変更し、1カ月後に見事、訪問看護から訪問介護に移行しました。

 国は、あと3000カ所ほど訪問看護ステーションを増やさないといけないらしいので、それまではきっと私たちは“甘い汁”を吸っていられるのでしょうけど……。フフフ、その後、甘い汁を漫然と吸い続けてきた訪問看護事業者にどんな末路が待っているのか、本当に楽しみで仕方ありません。

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つぼうち のりこ氏●1988年東京女子医大付属看護専門学校卒。同大付属病院、日本医大多摩永山病院などを経て、98年から訪問看護に従事。セントケア(株)訪問看護部次長、(株)ミレニア訪問看護サービス部長を務め、訪問看護事業所の立ち上げと運営・教育に携わる。2013年におんびっと(株)を設立。訪問看護ステーションへのコンサルティングや教育事業を手がけ、14年2月から訪問看護サービスをスタート。