主治医がケアマネジャーに「訪看さん入れてよ」と依頼し、当社に連絡が来ることもよくあります。ただ、主治医が訪問看護の役割を本当に理解した上で依頼しているのかについては、個人的には疑問です。依然として、「在宅医療の主役は医師だ!」と考え、訪問看護を医師の補助的な位置付けにしか捉えていない医師が多いからです。月2回の定期訪問以外の訪問が頻発している患者に対して、訪問看護師に訪問診療の“肩代わり”を求めるケースや、主治医が患者・家族と円滑なコミュニケーションが築けず手に負えなくなったケース、(非がんも含めて)ターミナルに向け、状態悪化に少しずつ備える目的で訪問看護を依頼されるケースなどが多い印象です。

「退院調整ナース」からの依頼が急増
 ここ数年、増えているのが、退院支援室退院調整室など、医療機関の「看護相談室」的なところで働くナースからの依頼です。MSW(医療ソーシャルワーカー)は“転院専門”のようで、在宅への退院患者についてはナースが関わっているケースが圧倒的に多いです。在宅への帰宅願望の強い(緩和ケア病棟の入院待ちの方も含む)がん末期、気管切開や人工呼吸器を装着しての退院となった神経難病、初めてのインスリン導入後の退院など、紹介される患者さんの疾患や背景はさまざまです。

 退院調整ナースの方たちの対応は、本当に病院によりけり……。医師たちにまで権限の及ぶ担当ナースがいる病院であれば、例えば、退院時に特別訪問看護指示書が必要になりそうな患者の場合にも、担当ナースにお願いするだけでこちらから主治医に説明せずとも指示書の手配が済んだりします。介護保険制度を熟知した担当ナースがいると話が早く、退院後のサービスの調整もスムーズです。

 一方、医療機関によっては、“なんちゃって退院調整ナース”も、正直いらっしゃいます。厚労大臣の指定病名の40歳代の社会保険加入者の患者さんが退院する際、本来なら医療保険の適応にもかかわらず、「介護保険の方が負担が少ないから、そちらでよろしく〜」と平気で言うナースも中には存在します。

レアケースとして「主治医」からの直接依頼も
 主治医から直接訪問を依頼されることはまれですが、過去に経験があります。クリニックに通院していた患者が来院しなくなったため、その患者宅へちょくちょく往診に出向くようになった内科の主治医。ある日、家族から「なんだかおしり付近に傷ができているようだ」と言われたその主治医は、傷をよく診もせずに電話で訪問看護を依頼して来られました。どうやら「褥瘡=訪問看護に依頼」という公式が頭の中にあったようで、こちらから催促することなく特別訪問看護指示書も交付してくれました。我々がきちんと治癒につなげた結果、その医師とは、同様の患者がいる場合に必ず直接依頼して頂ける信頼関係が築けました。

 また、末期がん患者から訪問診療の依頼を受けた医師が、「訪看は決まっているの?決まっていないなら坪内のところに」と当社をご指定くださったケースもあります。いずれも、当社とは特別な関係にはない医師たちですから、本当にありがたいの一言に尽きます。