さらにレアケース、「家族もしくは本人」からの依頼
 ご家族もしくはご本人から直接依頼されるケースも、わずかですが過去に経験があります。現在利用中の訪問看護ステーションと何らかのトラブルを抱えている方や、退院後にステーションの変更を考えている方などです。このような時、多くの場合、電話で問い合わせを頂きます。勇気を出してお電話頂いたのですから、親切丁寧な対応が肝心です。

 余談ですが、適切な電話応対は、訪問看護師に特に求められるスキルだと私は考えています。病院を辞めたばかりのナースは、どうして電話の受け答えがきちんとできないのでしょうか(それ以前に、電話に出ようともしない)。多くの病院は、かかってきた電話は交換台や事務員さんが最初に取って病棟などに転送しますから、中にいる看護師には、「あ〜い(どうしても私には、『はい』とは聞こえません)」と内線電話に気楽に応答する癖が染み付いています。でも、訪問看護ステーションに電話をかけて、「あ〜い」と出られたら、相手はまず話したくなくなりますよね……。

「地域の保健師」からの依頼も
 神経難病や小児慢性疾患のように地域の保健師が関わっているケースで、本人・家族が納得せずステーションの変更がたびたび発生するような場合に、依頼を受けることがあります。このような利用者・家族は、訪問頻度や訪問(滞在)時間、ケア内容の変更など、事業所側の人員不足による一方的な都合に泣かされてきた人々が大半であり、事前に保健師を巻き込んだカンファレンスを数回行うことがポイントです。ただし、中には故意にクレームを連発してくるケースもあります。その意味でも。密な事前打ち合わせが欠かせません。

 ここまでお読み頂き、お分かりですか?訪問看護に利用対象者の明確な基準はありません。最低限、医療ニーズはほしいところではありますが、その線引きは非常に困難です……。看護師の感性を目一杯総動員させて、利用者のニーズを導き出していくものかもしれません(うん!奥が深い!)。それゆえ私ははまっており、自分自身で法人を作ったのであります!!

※本コラムでは、読者の皆さまからの質問を募集しています。訪問看護に関する現場の悩みにエキスパートがお答えします。投稿はこちらから。お待ちしております!


つぼうち のりこ氏●1988年東京女子医大付属看護専門学校卒。同大付属病院、日本医大多摩永山病院などを経て、98年から訪問看護に従事。セントケア(株)訪問看護部次長、(株)ミレニア訪問看護サービス部長を務め、訪問看護事業所の立ち上げと運営・教育に携わる。2013年におんびっと(株)を設立。訪問看護ステーションへのコンサルティングや教育事業を手がけ、14年2月から訪問看護サービスをスタート。