質問
 保険薬局で薬剤師をしています。昨今、薬剤師の世界では在宅医療への関わりを促す声が多いですが、薬剤師が在宅医療に関わることをどのように思われますか。もし「大いに関わる方がいい」と思われるとしたら、具体的にどんな業務を薬剤師に期待されますか。

回答者
坪内紀子(おんびっと[株]代表取締役)


 今回は、薬剤師の方からメールを頂きました。他業種の方からのご質問、大変光栄です。ありがとうございます。早速、本題に入っていきましょう。

 訪問看護の対象は子どもから高齢者、障害、神経難病を有する方まで様々ですが、介護保険制度開始以降は、高齢者世帯や高齢独居の方々が非常に多いというのが現状です。私は、新規利用者に初回訪問する際には、その患者さんに処方されている内服薬の実物をすべて拝見しています。

 ヒートシールやPTPシートのまま数十種類の内服薬が処方されている方、すべての処方薬が一包化されている方など、その所有スタイルは様々です。また、内服の管理状況を確認すると、薬の残数がバラバラになっている人、多くの処方薬の中から気に入った色の薬だけを間引いて飲んでいる人、はなから服用していない人、残薬の入った数年前の薬袋を“大事に”保管している人——と、千差万別です。そこで、本来の訪問看護業務ではないものの、ある意味「仕方なく」、我々訪問看護師が薬の整理を行うことになります。

 ここで強調したいのは、看護師は薬のプロではないということです。薬剤師が関わることで、「薬が大きく服用しにくい」「味が苦いから飲んでいない」といった患者の訴えに対し、剤形の変更や、同じ作用の他の薬剤への変更を医師に提案するなど、専門的な介入が可能になります。

 私たちは、薬局から発行される薬剤情報提供書を頼りに、薬袋と提供書の日付を確認しながら、処方内容に沿って薬を整理していくだけです。そして、あまりにも年数の経った薬袋を大量に持っているケースや、パッと見ただけで残数が合っていない場合などは、誤薬のリスクが非常に高いと判断し、薬一式をステーションに持ち帰り、事業所で預かるようにしています(そういう患者は常時にいます)。

 これまでに体験した、印象深いケースを紹介しましょう。