質問
一昨年、訪問看護ステーションを開業しました。「訪問看護は儲かる」と聞いて異業種から参入したのですが、2年経っても一向に黒字転換しません。当事業所には8時間勤務の看護師が管理者を含めて4人おり、3人のスタッフは1人当たり1日に最高4件訪問しています。物の本には「月に67件くらいの訪問件数が妥当」と記載されており、管理者からはそれを根拠に「67件をクリアしているのだからいいじゃないか。これ以上は看護師の負担が増えるから訪問させられない」と抵抗される始末。この数字では、利益は到底出ないのですが……。
確かに、訪問看護経営に関する書籍の中には、そのように記載しているものがあります。訪問看護事業所の調査結果から、看護師1人当たり1カ月60万以上の事業収入があるステーションは経営が安定していることが分かり、看護師の負担が少なくかつ経営を安定させるための「理想的な訪問件数」は、例えば、訪問1件の平均単価が9000円だとすると、60万円÷9000円で67件になる——というのが、数字の根拠のようです。
私はこれを読んだ瞬間、あまりに見当違いの内容に、怒りを通り越して笑ってしまいました。仮に看護師1人当たりの事業収入が1カ月60万円で、そのステーションに常勤換算で5人の看護師がいた場合、当月の売り上げは300万円となります。日本看護協会が公表している看護職の給与総月額は平均37万4298円であり(2013年1月支給分)、仮に管理職の給与も同額と仮定した場合(実際にはあり得ませんが)、×5人分、計187万1490円が人件費として消えてしまいます。社会保険料や雇用保険などの法定福利費まで計上すると総額224万5788円に上ります。
つまり、当月の売り上げに対して人件費が約75%を占める計算となり、残り25%でステーションの維持経費や地代家賃、賞与分割り当て等を考えなければいけません。これでは、誰も訪問看護をやりたいとは思わないでしょう。