質問
 卒後7年目の看護師です。都内の訪問看護ステーションで働き始めて3年目の今年、管理者になりました。先日、出身大学の同窓会に出席したところ、訪問看護の実習生を受け入れてもらえないかと教授から打診され、悩んでいます。ステーションの職員数は、常勤は私1人、非常勤3人とギリギリの状態。正直、学生の指導をする余裕はないのですが、役に立ちたい気持ちもあり…。受けたい気持ち半分、受けたくない気持ち半分で揺れ動いています。

 それは、なんとも悩ましいですね。ただ、結論から申し上げますと、看護実習生は受け入れた方がいいですよ。一見大変そうに感じますが、実はステーションにとってもメリットはたくさんあるのです。

 弊社の訪問看護ステーションは、オープンしてまだ3年目を迎えたばかりですが、法人の設立当初から決めていた方針の1つに、「看護実習生の積極的な受け入れ」があります。実は、以前勤めていた会社の訪問看護ステーションでもこの方針を貫いてきました。

 なぜそのように考えているかと言えば、あれは、介護保険制度が開始された2000年までさかのぼります。当時、私は新規オープンした訪問看護ステーションの管理者をしていたのですが、真夏の暑い盛りに、2人の女性がステーションを訪ねてきました(アポイントの有無は記憶にありません)。

 それは、都内の某看護学校の教員で、「看護実習の受け入れ先がなかなか見つからず、何十件も営業に回っている」とのこと。当時は、今よりも訪問看護ステーションの数がはるかに少なく、なり手も限られていた時代。教員は学生に訪問看護の魅力を伝えるどころか、営業に時間を取られている…。「本末転倒とはこのことだわ!」とショックを受けました。

 それ以来、来るもの拒まず看護実習は受け入れる方針とし、今では、自分から学校側に「看護実習生の受け入れ準備が整いました」と記載したダイレクトメールを送付するまでになったのです。弊社のステーションの場合、昨年、事務所が移転し、受け入れ態勢がそれなりに整ってきた夏頃に、東京23区内の看護系大学や専門学校にダイレクトメールを送りました。結果、5校から実習受け入れの依頼があり、今年、すべて受け入れています。

訪問看護師を目指す学生を増やす
 看護実習生を受け入れる最大の目的は、「訪問看護の仕事に対していい印象を持って卒業してもらう」ことに尽きます。学校の実習要綱に記載されている目的とは大いに異なり恐縮ですが、現場の人間にとっては、そこが一番重要なのです。看護系大学や看護学校の教員たちの中には、おそらく在宅現場での勤務経験がなく、学生の実習に付き添っている感が否めない方もいるのが現状です。

 国の政策でも、病院から在宅への流れが加速している今だからこそ、現場の私たちが声を上げ、訪問看護の魅力を伝えていくことが必要です。例えば、1日中業務に追われる病棟とは異なり、最低でも30分近く患者さんと1対1で向き合い、ケアを提供しながら関係性を深めていける。訪問看護には、そんな本来の看護活動が存在しているのです。

 もちろん、実習で好印象を持てば、訪問看護師を目指す学生が増えてくれるのではないかという期待があります。さらには、将来、実習先だった訪問看護ステーションに就職してくれる学生が現れるかもしれません。人材紹介会社経由で看護師を採用した場合、紹介料として推定年収の20〜30%程度は取られるわけで、自力で、会社の方針に共感してくれる人材を採用したいと考えるのは、どのステーション管理者にとっても共通の思いでしょう。