また2つめに、残念ながら、看護師は「社会人(会社に雇用されている)という意識が低い」方が多いのも特徴です。 先ほど申し上げたように、看護師は売り手市場で人材紹介会社でもチヤホヤされていますから、勘違いしてしまいやすいのです。 私の経験から、面接時に「お給料はそこそこでも、生活していける分だけあれば大丈夫なんです」などと発言する看護師は多いのですが、そんな看護師はほとんどいないと思った方がよいでしょう(ズバリ面接時のポイントです)。

 高額な研修費用を要求したり、社用車を自宅に持ち帰って乗り回した上に駐車場代を請求するなど、公私混同の経費精算が増えるケースも少なくありません。また、きちんと会社の経営状況や方針を共有し、理解してもらっていないと、すぐ愚痴が広がってしまいます。パートさんの場合は時間給が減れば愚痴の温床になります。逆に正社員で実稼働させてばかりいると、これもまた愚痴の温床になります。愚痴は連鎖して、すぐ対策を打たないとどんどん拡大するのでとても怖いのです。

 ちなみに、意外と手取り給料でしか話ができない看護師も目立ちます。採用面接時には、後々のトラブルを回避するためにも「額面提示ですよ」の念押しは必須です。

会社の方針はしっかり共有を
 では、こうした傾向にある看護師たちが少なくないことを踏まえて、経営者はどのように対応していけばよいのでしょう。大切なのは、社内で経営や運営方針を明確にし、現場のことはある程度看護師たちに任せつつも、基本的な方針は一つ一つ職員に提示し、従うようにしてもらうことが欠かせないでしょう。

 例えば、帳票類はオーナー自身がしっかり管理すべきでしょう。現場任せにしていると、コンプライアンス上必要のない帳票類が増え、コンプライアンス上必要不可欠な帳票類の管理が行き届かなくなってしまうことがあります。実地指導の時などに到底対応できなくなります。備品の発注に関しても日ごろから方針を共有しておくことが大切です。

 また、訪問のスケジュール管理も重要です。現場の看護師任せにしていると、正社員が1日3〜4件しか訪問せず、実働時間を有効に使わないこともあります。「経営方針」はオーナーの切り札です。正社員は週何件訪問するとどのくらいの収入になるのか、といった数字をきちんと提示していかないと、いつまでたっても経営は楽にはならないでしょう。

 私自身は、これまでに数多くの訪問看護ステーションの開設や立て直しにかかわってきましたが、顧客にはまず「看護師の中にはとても厄介な方もいますから、『看護師さんは聖職なのでおかしいわけがない』という幻想や妄想をお捨てください!」ということを伝えています。たいていの場合、数カ月後にはみなさん一様におっしゃいます。「やっと、初めに言われたことが理解できました〜」と。

 最後になりましたが、どうしようと思いあぐねるより、いっそ仕切り直してみませんか。国が病院から在宅への流れを加速させている中、訪問看護は世の中のニーズがますます高くなっています。そして、今まで申し上げたような点に気を付ければ、看護師といい関係を築けるケースも多くあります。看護師の全員退職後に、一度ステーションの休止届を都道府県に対して提出し、人材確保からやり直してみるのが一番です。 と、その前に、あらぬ屁理屈で辞めた看護師たちに労基署に駆け込まれないように細心の注意をお払いくださいませ。