質問
私は、ある訪問看護ステーションの管理者を務めていましたが、この度、転居に伴い勤務先を変更しました。新しい勤務先のステーションでは、管理者が翌月退職予定だったため、私に管理者をやらないかと打診がありました。ただ、カルテの記載内容や訪問スケジュールの組み方など、以前のステーションと仕事のやり方が何もかも違って戸惑っています。このステーションは収益面でも伸び悩んでいるので運営方法を見直したいのですが、いったいどこから手を付ければいいでしょうか?
ちょうどいいタイミングで驚いています。私自身、これまで様々な訪問看護ステーションに勤めてきましたが、その実体験や、2017年に東京都から委託されて請け負った訪問看護経営相談会での相談内容、そして現在コンサルティングを行っている事業所からの相談内容などから、最近、業務の標準化がなかなかできない(マイルールが横行している)、利益が思うように出ない、といったことで悩んでいらっしゃる訪問看護ステーションにはいくつもの共通項があることが分かってきました。
あくまで私の経験談ですが、経営的にうまくいかない訪問看護ステーションにありがちな問題としてまず目につくのは、ステーション内が整理整頓できていないという点です。以下に具体的な例を紹介していきます。
□弊害を生む個人用ロッカー貸与
社内規則に則り、定期的に中を点検する習慣ができていない限り、個人用ロッカーの貸与は推奨できません。というのも、個人ロッカーには仕事に関係のない私物まで乱雑に入れてあるケースが多く、私がコンサルティング先の事業所で経験したケースでは、いくつかのロッカー内にお菓子や漫画本の山ができていました。急にその看護師が退職した日には、ロッカー内の物の処分に何時間も費やすことになりかねません。また個人ロッカーはスペースの無駄使いにもなりますし、私服やユニフォーム、靴などいろんなものが混在するため、不衛生にもなりがちです。
□整理ができていない分厚いカルテ
カルテが異常に分厚くなっていませんか? カルテの中身を整理せず、何でもかんでも入れっぱなしにしているケースがよく見受けられます。必要な時にすぐ必要な情報を見つけられないですし、分厚いカルテは扱いにくく、落として足にでもぶつかれば、凶器にもなりかねません。患者に関する情報を何でも書類にして残すステーションは多いですが、すぐにその情報を探せなければ意味がありません。
□ホワイトボードに表示された患者名
いろんなステーションを訪問する機会がありますが、壁に大きなホワイトボードがある事業所が少なくありません。何が掲示されているのかな?と思いきや、患者名が堂々と表示されているのには驚きます。訪問看護ステーションには相談室の設置が義務付けられているため、外部の人が出入りします。個人情報保護の観点からも、人が出入りする事業所にわざわざ掲示するのはどうなのでしょうか。病院の真似をする必要はないのです。
□棚いっぱいの衛生材料の山
グリセリン浣腸100本入りの箱が何箱も積んである事業所もありました。そもそも、訪問看護ステーションにそんなに在庫が必要なのでしょうか。吸引チューブ、尿道留置カテーテル、ディスポ注射器、滅菌ガーゼ、各種テープ類などが山積みになっている事業所もありますが、明らかに在庫管理ができていない証拠です。
□個別に与えられる訪問バッグ
個人用ロッカーの問題と同様で、会社側が点検もせずに個人に貸与しっぱなしにしていると、その中は整理されず、不必要な物品まで入りがちになります。私の経験では、看護師が私物の軟膏やクリーム類を入れて勝手に患者に使い回していたり、退職時に訪問バッグを返却する際にはいろんなものがなくなっていて、使えない状態になっているケースがしばしば見受けられます。自主性に任せ過ぎた結果、人によってサービスが違うという問題も起こりがちです。
□増え続ける不必要な業務
見直すべき業務として典型的なのは、ファクス送付状の作成です。さて、あなたの事業所では毎日、または一週間に何枚のファクス送付状を作成していますか。主治医やケアマネジャーなどに患者の病状を伝えて情報共有することは必要ですが、書類の作成には時間がかかります。何でもかんでも書面化する必要はあるのでしょうか。
これらの状況がないか業務内容を見直すことで、様々な業務の無駄、そして看護師個人ごとの業務のバラつきが少なくなり、安定的に質の高いケアを提供できるステーションになります。本来の看護業務に専念しやすくなり、サービスの質向上にもつながるでしょう。
以下には、弊社の具体的な取り組みをご紹介していきます。