——転職先はどのように見つけたのでしょう。
 「日本医事新報」に募集広告を掲載していた現在の勤務先に、自分の経歴や資格などを書いた手紙を送って、勤務が可能かどうか問い合わせました。ほかにも調べたりはしていましたが、具体的に行動を起こしたのはここだけです。私の場合は幸いにも、初めに応募した病院に勤務することになりました。

——転職にあたっては、どのような条件を設けていましたか?
 やはり、自分のこれまでの経歴や資格が生かせることですね。それに、出身地方での勤務を希望していました。当時、応募先の病院が立て直しをはかっていた時期で、腎臓内科の専門医を探していました。私のキャリアを評価してくれて、思い通りの医療ができそうだったことが転職の決め手になりました。

——以前の勤務先と転職先を比較すると、どのように変化しましたか?
 職場環境や生活環境、待遇などすべての面において、以前の病院よりも満足できています。以前の年収は1500万円程度でしたが、昨年の年収は2500万円でした。ただしこれは、時間外勤務などもすべて含めた金額です。

 診療内容は透析も含めた腎臓内科全般と一般内科で、休日は日曜日だけ。毎月の時間外勤務は平均80時間程度あります。祝日や夏期、年末年始も休めませんし、有給休暇も消化できません。学会や研究会へは出席できますが、診療に支障がないことが前提です。以前の勤務先では休みはしっかり取れていましたから、仕事自体はハードになっています。しかし、正当な評価を得て責任あるポストを任され、自分の思い通りの医療ができていますし、経営に貢献できている自負もあります。大変ですがやりがいはありますね。

——これから転職を考えている医師へアドバイスをお願いします。
 私がそうだったように、医局を離れることに不安を感じる人は、まだ多いと思います。でも卒業後10年、真剣に医療を行ってきたという自負があれば、どこの医療機関でも通用すると思います。ただ、転職を考えるなら、個人的には40歳がリミットだと思います。実際私も40歳ギリギリのタイミングでの転職でしたが、それより上では、新しい環境に馴染むのに苦労するかもしれません。

 医師の仕事をしていれば、様々な転機が訪れます。その時に職場を変わる、専門を変わるなど、別の道を歩き始める選択肢があってもいいのではないでしょうか。その際に大切なのは、勇気と決断力ですね。また、年収などの条件から入るよりも、自分のキャリアを生かせることを優先するのが賢明でしょう。新しい場で全力で仕事に取り組めば、待遇などは結果として後からついてくるはずですから。