——医局から離れるのは大変ではありませんでしたか。
4月に採用が決まって、6月には新しい勤務先に着任しなければなりませんでした。本来なら退職の2カ月以上前に言う必要があるし、C病院からは「今以上に減ったら成り立っていかない。とにかく辞めないで」と言われましたが、あり得ないぐらいのスピードで辞めさせてもらいました。
私の良き理解者で、同じA大学から派遣されている2人の先生にだけは事情を話したんです。そのとき、先生はこう言ってくれました。「新しい勤務先が決まったことは誰にも言うな。医局からどんな横やりが入るか分からない。両親の具合が悪いことは事実なんだから、それだけ言って辞めさせてもらえ。9年間、ここまで頑張ったんだ、もういいよ。何を言われたって、自分を大切にしなさい」。先生方のほうがもっときついのに、そんな言葉をかけてくれたことがうれしくて、涙が出ました。
案の定「就職口も探してあげるし、C病院に通ったっていいじゃないか」と医局が言ってきたのですが、もう1人の理解者の先生がA大学出身だったので、「いい加減にしろ!」と説き伏せてくれました。
今の勤務先に産業医としてかかわることになって4年。日本全国に散らばる従業員5000人の健康を守るのが、私の仕事です。具合が悪い社員を診察したり、健康診断の結果の判定をしたり。メンタルに関する相談も少なくないので、改めて勉強もしています。責任は重いですが、充実した毎日を送っています。現在の年収は約1200万円。以前より200万円ほど少なくなりましたが、実労働時間で時給を換算すると3倍に上がりましたから、とても満足しています。