——新しい職場はいかがでしたか。
 小児科クリニック3カ所の立ち上げに携わることができるなど、とても恵まれた環境でした。そのクリニックは、おかげさまで、開院からわずか1年で1日に200人の患者が訪れる人気クリニックになったことで、「自分が考える医療は、多くの患者さんに受け入れてもらえるんだ」という大きな自信になりました。また、そこでの報酬は出来高制だったため、関連病院にいた頃と比べると3倍程度の収入がありました。

 A医療法人での実績もでき、ちょうど子供が小学校に上がる年齢になった頃、開業を考え始めました。色々なことに取り組めて、収入面でも恵まれていましたが、雇われの身である以上、すべてを自分の好きなようにすることはできません。もともと、転職前から開業は視野に入れており、転職する際の面接でも、その意志は伝えていたので、4年勤務したのちに退職して地元へ帰り、35歳で自分のクリニックを開きました。

 自院の開業にあたり、A医療法人で小児科の立ち上げを経験していたことが、とても役立ちました。また、A医療法人での診療実績もモノを言いました。実は、毎月、自分が診た患者数や診療報酬を記録し、グラフにしていたのですが、それを銀行の担当者に見せたら、スムーズに開業資金を融資してくれたんです。

 開業時、広告などはまったく出しませんでしたが、大勢の患者さんが集まってくれ、わずか1カ月で黒字になりました。お母さん達のネットワークってすごいんですよね。保育園などで他のお母さんが「あの病院は良かった」と言ってくれることが何よりの宣伝になります。うちの場合、来院者の9割以上が口コミです。開業資金は15年ローンですが、今のペースでいけば、10年ぐらいで何とか完済できそうです。今は理想の医療ができて、毎日が充実しています。

——転職を考えている人に何かアドバイスはありますか。
 周囲を見ると、総合病院で働くことに疲れて、50代、60代で開業する先生も少なくありません。ただ、結構な額の借金を抱える人が多いことを考えると、体力、気力ともに充実している30代での開業も良いのではないでしょうか。それをふまえて、転職や自分のキャリアについて考えてみるといいと思います。

 「開業すると、治療に関して相談する人がいなくなって困るのではないか」と思われるかもしれませんが、そうした孤独感は全くありませんね。学会のメーリングリストに質問や相談を投げかけると、ほかの先生からすぐに適切なアドバイスがいただけるので、毎回、とても助けられています。この点でも、医局に依存する意味はないと言えますね。