質問
 2012年1月から訪問看護ステーションの経営に携わっています。この4月の診療報酬改定で「機能強化型訪問看護ステーション」が新設されたと知りました。これからは大規模化の時代とか……。小規模ステーションを必死に運営している身としては、落ち込むばかりです。

 2年前の1月と言えば、今世紀2回目の診療・介護報酬ダブル改定が行われた年ですね。請求業務にやっと慣れてきたところで報酬改定に見舞われ、さぞやご苦労も多かったことでしょう。そして今回の診療報酬改定。「機能強化型訪問看護ステーション」創設を知って、ショックを受けられたお気持ちはよくわかります。ですが、落ち込んでいても仕方ないので、ここは一つ、見方を変えてみませんか?

 「機能強化型」については、既存点数とは別に、新たに項目が設定され評価されるのだろうと私は想像していました。2月12日の中央社会保険医療協議会の答申を確認したところ、やはりその通りの結果でした。しかし、その点数は想像していたよりも安価でした。

 新設される「機能強化型」の報酬は、管理療養費の最初の1日目の算定額(7300円)が、1万2300円もしくは9300円に引き上がるだけ。今改定は、診療報酬初の消費税対応が決定しているので、既存の報酬も100円引き上げられます。7300円が7400円となるので、実質の差額は4900円もしくは1900円。ということは、准看護師一人が基本療養費(5050円)で稼げる金額よりも実は安いのです。取るに足らない話だと、お腹を抱えて笑い飛ばしませんか?

 私は、世の中に出回っているさまざまなデータを自分なりにすぐ分析してしまう癖があるのですが、ここでは、2012年7月時点のWAM NETのデータを基に、訪問看護ステーションの職員数に関する面白い分析結果を紹介しましょう(WAM NETは12年10月から厚労省管轄の全国統一版になりました。それ以前の分析なので、恐らく二度と抽出できない結果です)。

 まず、緊急時加算を届け出ている訪問看護ステーションが一つもない都道府県が、21もありました。そして残りの26都道府県のうち、看護師の人数表記がなかった中国地方の1県を除く25都道府県について、リハビリ系の職員を雇用していない、つまり職員が看護師のみの訪問看護ステーションの数を調べたところ、2410カ所ありました。それらの職員数(常勤換算)の内訳は、「5人以上」が508カ所(21%)、「7人以上」が445件(18.5%)でした。この数字はあくまで常勤換算です。今回の「機能強化型」は、常勤看護職員7人以上(機能強化型訪問看護管理療養費1)、もしくは5人以上(同2)が算定要件ですから、この要件をクリアできるステーションは全体で2割にも満たないのです。要は、影響はたかが知れているものと推測されます。

 そのほかの算定要件も順にみていきましょう。まず、「24時間対応体制加算」ですが、これは届け出ていることが当然だと思うので、ここでは割愛します。ただし前述のように、24時間対応していない訪問看護ステーションが、以前として相当数存在している点については、残念で仕方ありません。一体、だれのためのステーションなのでしょうか?

 算定要件にはこのほか、「年に20回(療養費1の場合。「2」の場合は15回)以上のターミナルケア療養費またはターミナルケア加算を算定している」があります。月に必ず1、2人亡くなる方がいることを意味しますが、厚労省はなぜここで、介護保険の名称である「ターミナルケア加算」を混在させたのでしょうか?来年の介護報酬改定の事前対応ということでしょうか?

 また、「特掲診療料(この名称は12年から突如と登場し、現場を混乱させました。介護保険受給者であっても、いわゆる厚労大臣の認める医療保険での訪問看護が優先される利用者という意味です)の施設基準等の別表第7に該当する利用者が、月に10人(療養費1の場合。「2」の場合は7人)以上」という要件もあります。

 最後に、「居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)が同一敷地内に設置されていて、なおかつ介護保険利用の訪問看護をその同一敷地内の居宅介護支援事業所から一定程度以上受けていること」も要件です(これは、共同ビルなどの1階に法人が異なる居宅介護支援事業所があり、3階に別法人のステーションがある場合はどうなのでしょうか?)。