質問
 キャリア10年のケアマネジャーです。その前はヘルパーをしていました。地域で訪問看護師さんたちと一緒に仕事をしていますが、分からないことを聞くと「そんなことも知らないの?」とあきれた表情をされます。私たちに対する態度は、常に“上から目線”。正直、ストレスは溜まる一方です。看護師さんってそんなに偉いんですか?

回答者
坪内紀子(おんびっと[株]代表取締役)


 今回は珍しく、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)さんから質問をいただきました。しかも、内容が内容だけに……、本当に申し訳ありません。同じ看護師として、まずはこの場をお借りしてお詫び申し上げます。気のいい看護師も居るには居ますから(私です![笑])。

 実は、訪問看護師のケアマネに対する振る舞いについては、私自身、かねてから懸念していました。介護・医療連携がお題目のように叫ばれる中、どうしてこのような不満を生んでいるのか、考えていきたいと思います。その前にまず、読者の皆さんには、「看護師の世界の常識は世間の非常識」ということをご理解いただきたいと思います。

 ケアマネは、2000年の介護保険制度創設と同時に誕生した専門職です。現在、合格率は15%程度で、年々低下しているそうです。ケアマネ資格を保有している看護職は15万8000人ほどいますが、実際にケアマネとして就業している人は少ないなというのが私の実感です。

 2003年ごろまでは、“ケアマネバブル期”だったとの印象があります。100人の利用者を担当しているケアマネもゴロゴロいて、しかも高給。当時、たまたま面接したケアマネは、「月給60万円以下では働きません」と言っていました(驚!!)。しかし、介護報酬改定など各種制度改正に伴い、ケアマネの給与は次第に価格破壊が起こり、と同時に、看護職出身のケアマネも姿を消したようです。理由は明快で、看護師として働いた方が給与が高くなったからでしょう。

医師から虐げられていることへの反動?
 さて、訪問看護師の色々な団体は、ケアマネの批判をよくしているなという印象が私にはあります。多くは、「分かってないのよね〜」から始まり、「〜だからけしからん」で終わるようです。昔、営業のつもりで参加した、訪問看護ステーションのとある寄り合いは、行ってみると『ケアマネの悪口(陰口)大会』でした。耳鳴りがするくらい、聞くに堪えない内容でした。本人不在の中でのケアマネの吊るし上げ。それはそれは恐ろしかった〜(泣)。

 なぜ、看護師はこのようなことをしてしまうのか?私なりに考えてみました。

 訪問看護師の多くは、病院で看護師として働いた経験があります。病院には必ず医師が“君臨”しており、看護師は多かれ少なかれ、患者に関すること(安静度に関連することや、患者からの訴えに対する医師の対応や処方内容に対する見解の相違など)で、医師とバトルした経験があります。意見交換というよりは、もう少し感情的なある種の“戦い”のような感じです。

 このような“バトル”になかなか勝てない多くの看護師は、医師から虐げられているという感情も抱いているようです。その証拠に、看護師同士の飲み会では、「○○医師は全くけしからん」的な不平不満が多かれ少なかれ聞かれます。しかしそれでも、最終的に医師には逆らえないようです。私の場合は、新天地を求め転職することで解消したりしていましたが、そうではない場合、看護師のイライラの矛先は、院内で看護師より立場が弱いと認識されているヘルパーへ向かいます。私自身、病院勤務時代にこのような場面を目撃したことがあります。まさに、陰湿な“負のスパイラル”の始まりです(というよりもはや、いじめですね……)。