麻酔科医として1日4〜5例の手術を受け持つほか、緊急時にももちろん対応。毎日、ただ忙しく働き続け、たまの休みは疲れをとるために寝ているだけ。自分のための時間など一切なく、それでつぶれていく同僚を何人も見てきた。「医師は医療のことだけを考えていればいい。趣味を持ちたいなんて、考えちゃいけないんじゃないか?」という思いにさいなまれながら、最終的には仕事とプライベートの両方を充実させる働き方を選んだ。そんな彼女は、「今が一番満ち足りている」と話す。
——現在までの転職歴について教えてください。
私はこれまでに2回、病院を変わっています。1回目は出身大学の医局から地元のA総合病院に、2回目はそのA病院から、同じく地元のB個人病院へ移っています。
1度目の転職、医局からA総合病院へと転じた理由は、「両親も年を取ってきたことだし、そろそろ実家に戻りたい」と思ったからです。
私は地方の国立大学の出身で、卒業後はそのまま出身大学の医局に入りました。教授は尊敬できる人でしたし、局内の雰囲気も良く、全く不満はありませんでした。ただ、県外に関連病院がほとんどなく、地元に帰れる見込みが全くなかったため、医局を離れることにしました。
ただ、そこでは麻酔科医が不足していて、私が辞めてもすぐに要員を補充できない状態でした。「後任のメドがつくまで待ってほしい」と、何年も慰留されはしたものの、最後は教授も事情を理解してくれ、こころよく送り出してくれました。
——1度目の転職の際は、具体的にどのような活動をされたのですか?
「あせって決めることはない。じっくり腰を据えて考えよう」と思っていたので、結果的に「辞めよう」と決意してから、実際に辞めるまでに1年ぐらいかかりました。
実家はごく普通のサラリーマン家庭で何のコネもないし、働きたい場所も実家のある県へ変わることから、医師紹介会社を利用しました。大学時代の友人が利用していて、何となくなじみもありましたし。インターネットで調べて、良さそうな会社にアクセスしました。条件に見合う病院を紹介してくれ、かつ面談のアポ取りや年収の交渉までしていただけるので、楽でしたね。
私が出した条件は、「実家から勤務地が近いこと」と「専門医資格取得のための研修が受けられること」の2点です。「専門医資格取得のための研修が受けられること」にこだわったのは、資格を取っておけば、後々になって別の病院へ動きやすいかなと思ったからです。当時は今と比べると、私にさほどキャリアもなかったので、この2点が最重要でした。ですから、多くの方が転職条件にする「収入」や「勤務条件」については、特に問いませんでした。年収は据え置きの900万円、忙しさは正直増しましたね。