——A総合病院ではどのような働き方をされていたのですか?


 とにかく忙しかったですね。麻酔科医は6人いましたが、それでも1日4〜5例はありました。当番の日には通常の業務に加え、緊急手術などにも加わりますから、毎日朝から晩まで働き詰めでへとへとに。仕事以外のやりたいことなんて一切できないどころか、プライベートな時間自体が皆無に等しかったですね。そのうち、「この先ずっとこうやっていくのかな…。このままでいいのかな?」と思うようになりました。


——そうした中で、2度目の転職に踏み切った理由は何ですか?


 麻酔科医は1回1回の手術がある意味、勝負です。集中力や瞬発力が必要とされるし、失敗は許されませんからプレッシャーも強い。そんな中で仕事だけに忙殺される日々になると、みんなつぶれていくんですね。医師を辞めたり、他の科に変わったり。直接の知り合いではありませんが、中には自ら命を絶った人もいます。そうした人たちの姿を目にして、「私はつぶれたくない。私には趣味だって、勉強したいことだってある」という思いが強くなったのと、ちょうど専門医の試験に合格したこともあって、2度目の転職を決意しました。


——2度目の転職活動はどのようにされましたか?


 そのときもまた、医師紹介会社を利用しました。ただし、前回とは違う会社です。もう一度紹介してもらうのは、申し訳ないような気がして…。今度の紹介会社は、自分の希望する条件を出すと、該当する紹介先を持つ会社からアクセスがある、という形態のサイトを利用しました。オファーがあった中から良さそうな会社を2〜3社選び、紹介を受けました。

 今回は1回目と違い、私のキャリアも増えましたし、専門医資格を取得していたので、「幅広く紹介できる」と紹介会社の方から言われました。麻酔科医を1人しか置かない病院も少なくないようで、実際に紹介要件として専門医という条件を出す病院が多かったです。

 私の条件としては、自分の時間、勉強するための時間が欲しかったので、日勤を希望しました。こうした条件でも、こちらが「ここなら」と思える勤務先を選べるぐらいのオファーがきましたね。病院側から「ノー」と言われたことはありませんでした。医師紹介会社にお願いするぐらいの病院ですから、のどから手が出るほど人が欲しかったのだと思います。


——現在の勤務状況を教えてください。


 今はB個人病院に週3回、朝8時から夕方6時まで勤務しています。年収は900万円から1200万円にアップしました。たまには夜10時くらいまで残ることもありますが、単価的にはかなり上がったと思います。

 個人病院なので診療科は少ないのですが、麻酔科医は私1人なので、とてもやりがいを感じています。以前は心のどこかで上司に頼っていましたが、今は私だけ。勉強しなければいけないことも増えましたが、専門医としての自分の力を試せるいい機会だと思っています。