——自由になった時間で何をされているんですか?


 勤務日以外の平日はファイナンスの勉強のため、学校に通っています。実は高校時代から経済に興味があって、いつか勉強したいと思っていたんですよね。日々の生活に忙殺されてずっと忘れていましたが、最近その夢を思い出しました。最終的にはファイナンシャルプランナーの資格を取りたいと考えています。ただ、それを職業にしたいというよりも、純粋に学びたいという気持ちが大きいですね。

 また、週末は趣味のゴルフを楽しんでいます。両親もプレーするので、一緒にコースを回ったり、練習したり、いい親孝行になっているかなと思います。医師をしていると、医療関係以外の人と知りあうチャンスがなかなかないものですが、ゴルフをすることで他の業種の人と仕事以外の話ができるもがいいですね。

 以前は「医師はいつも医療のことだけ考えているべき。趣味を持ちたいなんて思っちゃいけないんじゃないか」と思っていましたが、最近はこうした呪縛から解放され、やっと自由になれた気がします。自分のやりたいことに時間を使えるようになったら、ストレスが減りました。転職前は「あー、今日も仕事か。早く週末にならないかな」と思いながらこなしていたところも、正直を言えば少なからずありました。ですが今は、「今日はとにかく仕事をがんばろう!」と、以前より集中できるようになりました。しっかり仕事に向き合えていると思います。


——逆に、転職したことによるデメリットはありますか?


 地方では、転職組はメジャーな存在ではないので、年長の方からバイアスがかかった目で見られることがありますね。後から聞いたのですが、転職先の病院から前の病院に「今度来る先生ってどんな人?問題のある人じゃない?」という問い合わせがあったそうです。「医局で動けない=協調性がないのではないか」「何か問題を起こしたので、医局を出たのではないか」と勘ぐっていたのでしょう。個人的には仕方がないかなとは思っています。

 確かに、医局に在籍していれば、絶対に仕事にあぶれることはないでしょう。医局はいわば安定を手にできる“保険”のようなものです。しかし、専門性を身につけたら、自分で仕事を探すという手もあるのかなと私は思っています。麻酔科医はマイナーな半面、専門性が高いので、他の科と比べて独り立ちがしやすいのかもしれません。

 ただ初めから地元の医局に入っていたら、やはり「医局こそが王道だ」と信じて疑わず、転職という考え自体が浮かばなかったでしょうね。


——今後もこうした働き方を続けていく予定ですか?


 分からないですね。結婚や出産をしたら状況も変わると思いますし。ただ資格を取るまでのしばらくの間は、このスタイルを続けようと考えています。