——これまでの経緯をお聞かせください。
私は生まれも育ちも関西地方で、地元の大学医学部を卒業しました。卒業時には行政にいこうと決めていたのですが、教授から「臨床も経験した方がいい」とのアドバイスを受け、内科医局で2年間研修を受けました。教授はその間に心変わりするだろうと思っていたようですが、私の気持ちは変わらず行政医師に転向を決意。
保健所、県庁などの医療行政の中心で十数年ほど病院管理や医療安全などを担当しました。現在は生まれ故郷の関西地方に戻り、中堅の医療法人本部に勤務しています。
——なぜ、行政から民間に転身されたのでしょうか。
行政の職場は、深夜残業や休日出勤も当たり前の、それは厳しい環境でした。しかも収入は同期と比べても恥ずかしいくらいでした。そのわりには医師としての責任だけは求められることが多々あり、日ごろから疑問を持っていました。健康診断を受ける時間もなく、癌の発見が手遅れになる者や精神的に追い詰められる者もいて、「このままではいつか自分も…」と限界を感じるようになりました。
また、何か新しいことをやろうとしても、上司からは「前例がない」のひと言で終わり。誰かに感謝されることもなく、仕事にやりがいを持てなくなったのも大きな要因ですね。
——転職活動はどのようにされたのでしょう。
「病院管理」や「医療安全」といった、これまでの経歴を生かせるところを探そうと、医師向けの転職サイト5社に登録しましたが、いざ登録してみても、私のような経歴での求人はほとんどありませんでした。しかし、そのうち2社の担当者は、求人は出していないものの、私の経歴が必要とされるようなところに働きかけてくれまして、結局7件の医療法人などからオファーをいただきました。3件は東京、4件は関西です。
東京の3件は経営状態が悪く、関西のうち2件は大学の医局の影響が強いところだったこともあり、行政と何ら変わりのないように思えました。そこで、関西の残りの2件に絞って比較検討することにしました。