——具体的にはどんな方法で検討されたのですか?

 それぞれの医療法人の担当者と面談をする前に、それらに属する各病院へ視察に出向きました。病院内を回ってみると、いろんなことが分かります。いちばん感じたのは、現場の雰囲気の違いです。A医療法人に属する病院の方は、忙しく動き回っている人が多く、患者さんに声をかけられると、ぞんざいな対応をしている人が多くいました。一方、B医療法人に属する病院では、医師や看護師だけでなく、受付や案内に立っている人など、誰もが患者さんに対して丁寧に対応していたのです。

 そこでB医療法人の方に好感を持ち、面談の場でその時に気づいた点などをお話しすると、先方の理事長と事務部長から「われわれの法人の、ほかの病院も視察してみてもらえないか」と頼まれまして。そこで今度は、B法人に属する別病院を見に行きました。

——そこではどんな点に気づかれましたか?

 その病院でも患者さんへの対応はよかったですね。見舞い客の体で話しかけた私に対して、きちんと挨拶をしてくれました。これは簡単なことのように思えて、できていない病院も多いのです。半面、「廊下に物を置かない」という基本的なことができていなかったり、トイレに液体石けんがなかったりと、医療安全に対する取り組みが不十分な点が目につきました。また、医療安全というと患者さんへの対策がクローズアップされがちですが、患者さんの安全を守ると同時に、医療従事者自身も守らなければなりません。

 たとえば、B医療法人で初めに視察した病院では、採血のあとに注射針のリキャップをしている人を見かけました。あとで確認してみると、指導はしているのに現場で徹底されていないんですよね。こうしたことをB医療法人との面談の場でいろいろ指摘していくと、「ぜひ、うちにきてほしい」と言われ、すぐに採用が決定しました。現在は、院内の医療安全についてのアドバイザーとして働いています。

——登録した転職サイトは、何を基準に選びましたか?

 インターネットで検索してみると、たくさんの紹介会社があり、それを見ただけではどこがいいのかよく分かりませんでした。そこで、まずは関西に本社もしくは支社のある企業に絞ってから、実績などを確認していきました。また、登録申し込みのメールへの返信の早さ、登録票の内容も参考にしました。登録票は簡単な記入で済むものもあれば、かなり細かく記入するものもあります。後者の方が面倒に感じるかもしれませんが、それだけ自分のことを知ってもらえる、こちらの希望を伝えられるということです。

 現在の勤務先を仲介してくれた紹介会社は、かなり細かい登録票を用意していましたが、それでもあとから確認の連絡が来たりしたことで、熱意が感じられましたね。私は前職を続けながら転職活動をしていたので、「職場への連絡は一切しない」といった配慮にも好感が持てました。

——最後に、これから転職を考えている医師へアドバイスをお願いします。

 転職を考えるということは、現状に何か不満がある場合が多いと思います。その不満と、「それがどうなれば満足できるのか」を具体的に紙に書き出してみることをお勧めします。そして、絶対に改善したい点や希望を明確にして、登録や面談の際に伝えるといいでしょう。

 私の場合は、「通勤時間は1時間以内で、基本的には土日が休めること」「年収は1200万円以上」を希望しました。それと同時に、自分のやってきたこと、これからできることを具体的にアピールすることも大切です。単に現状への不満を訴え、アドバイザーと話していくうえで条件を考えていくという姿勢では、なかなかうまくいかないと思いますね。主体的に動くことが、転職を成功させるコツではないでしょうか。