質 問

 出身大学の医局に入りましたが、激務が続く上、先輩の指導も厳しく、正直ツライ毎日です。同級生の友人は早々に医局を離れ、今年から地方の病院に勤務。「仕事は楽だし、収入も悪くない」と話していました。僕もこの際、転職しようかどうか悩んでいます。(卒後4年目、28歳男性、循環器内科)

回 答
若いうちは医局にいた方がベター

 転職は選択肢の一つですが、28歳という年齢を考えると、少なくとも一人前になるまでは医局にいた方がベターだと思います。一人前といえる時期は、専門医の取得が目安になるでしょうか。

 なぜそう考えるのかといえば、診療科によって多少の差はあるにせよ、普通は大学に入ってコツコツやっていれば5年から10年で一人前になれるからです。

 ただし、医局の場合、一人前になるまでに必要なスキルを順番に習得できるわけではありません。仮にそれらをA、B、C、D、Eとした場合、人によってA→C→D→B→Eという順だったり、 C→B→A→D→Eになったりします。これは、医局と派遣先病院では教育環境に違いがあるためです。

 Cまで進んだ人が別の医局や病院に行って、D→Eとやれればいいのですが、実際はそんなに都合よくできない。この例で言うと、5年で全てをクリアできるはずが、途中で医局を辞めてしまうと、5年たったけどCを全くやっていないこともあり得ます。

 それに人間は嫌なことは極力やりたくないもの。自分で選べるとなれば、苦手な領域には積極的に手を出しません。一方、大学のシステムに乗っかれば拒否はできず、それなりにやらざるを得ない。だからこそ自分の専門に必要な技術がバランスよく養われていくのです。

 私がこれまでお会いした先生の中には、早い段階で医局を離れ転職を繰り返したために、卒後10年以上たっているにもかかわらず、満足な技術を習得していないという方もいらっしゃいました。

「宅浪」タイプなら転職しても可
 まだ一人前とはいえない段階で転職したいと思われている先生は、自分が「宅浪」できるタイプかそうでないか、胸に手を当ててよく考えてみてください。

 大学受験の際(浪人時代)、予備校に通わず、自力で勉強して成果を上げる人がいます。自分で自分をコントロールでき、自分でプログラムを組めて、目標に向かって走れるタイプです。キャリアを考えて自分なりに調べ、「カテーテルは○○先生の下で3年、心エコーに関しては△△先生に付いて2年やりたい」とか、そこまで自分なりにA、B、C、D、Eを組み上げられる人なら、年齢や経験に関係なく転職でも何でもやっていいと思います。

 一方で、予備校に通うなどして医学部に入ったような人は、大学のシステムというレールに乗っていた方が楽でしょう。このタイプの人は、行き届いたカリキュラムできちんと勉強し、いい成績をとったことで、人生の選択肢が広がったはずです。医師にも弁護士にもなれたのではないでしょうか。

 それと同様で、今後医師としてどうなりたいにせよ、医局で自身のレベルさえ上げておけば、どんな道だって選べます。レベルが低ければ、残念ながらそれに応じた仕事しか回って来ないし、当然評価もされません。

 みなさんはどちらのタイプですか?