質 問

 出産を機に医局を辞めて3年になりました。子どもも大きくなってきたので、再就職を考えていますが、ブランクがあって不安です。就職先として、どのような病院を選ぶべきでしょうか。(卒後10年目、35歳女性、婦人科医)

回 答
報酬にこだわりすぎず、ブランクを埋めることを最優先に。

 出産による数年間のブランクがあるのなら、まず何よりも、ブランクで鈍った勘を取り戻せることを最優先に就職先を選ぶべきです。

 どんな理由があったにせよ、ブランクはブランクで、残念ですが給与などの面でマイナスになることに変わりはありません。例えば医師キャリア12年で中断し、3年のブランクがあるにもかかわらず、「キャリア15年に見合う報酬をください」と要求する人がいますが、それを受け入れてもらうのは容易なことではありません。

 「どうせ働くなら、できるだけ高い報酬が欲しい」「働ける日数が限られるから効率良く」——。医師に限らず、復帰する際、人は様々なことを考えます。ですがここは自分に都合の良いことばかり考えるのではなく、まずはブランクを埋めることです。それに1年かかるのか、3年かかるのかは分かりませんが、以前と同じように仕事ができるようになれば、いくらでも可能性は開けるのですから、あまり復帰先の条件にこだわりすぎないほうがいいと私は思います。

 病院側の事情で「休む前と同じ報酬を支払います」と言ってくれるところもあります。ただし、そうした病院の多くは「医師数が足りない病院」であり、できることは限られるし、人数が少ない分、日々の仕事に追われることになりがちです。そんな環境では、ブランクは埋まりにくい。条件はいいかもしれませんが、その後の長い医師人生を考えると、やや疑問です。

 自転車のように、何年も乗っていなくても、試しに乗ってみたらすぐに感覚を取り戻せるようなものあればいいのでしょうが、残念ながら医療の世界はそうはいきません。ブランク明けは「医学の進歩が早くて、分からないことだらけ。自信がない」と、勘が戻るまで時間がかかる人が多いようです。

 ブランクを埋めるためには、当面の条件にこだわらないことです。できれば小さな病院ではなく、スタッフの人数が多めの組織を選ぶといいと思います。そうした環境なら、周りが手助けしてくれますから、日々の診療を続けながら、よりスムーズに医師としての勘を取り戻していくことができます。そのような病院では高給は望めないことが多いですが、割り切って考える必要があります。

 その意味では、育児休暇などでブランクが生じる際は、なるべく勘を鈍らせないようにすることも大切です。育児休暇に関して言えば、出産後は週1日でもいいのでできるだけ早く現場に戻った方が、勘が失われにくくなります。技術の低下、劣化はお金でカバーできるものではないので、子どもとの時間が多少減っても、技術の低下のペースを少しでも遅くした方がよいという考えもあっていいと思います。

 医療は急速に進歩しています。一度ブランクができてしまうと、どんどん自信がなくなり、医師人生がそこで終わってしまう人も少なくありません。まずはできるだけブランクを広げないように工夫をする。それでも空いてしまったら、少しでも早く埋められる環境の復帰先を選ぶことが大切です。