質 問

 他の医療機関への転職を考えています。まだ具体的な活動を始めてはいないのですが、妻に冗談めかして「別の病院へ移ろうかな」と話したら、嫌そうな顔をされました。僕としては「応援してくれるに違いない」と思っていたので、少々ショックです。僕自身の転職の意思は固いので、何とか妻の了解を得たいと思っています。どうしたら妻をうまく説得できるでしょうか。(卒後15年目、40歳男性、消化器内科医)

回 答
周囲の理解が転職の成功条件。意思は「小出し」に伝えよう。

 せっかく転職先が決まったにもかかわらず、「妻に反対されまして……」という理由で、内定を辞退するケースは少なくありません。

 内定まで話が進んでしまってからでは、転職先や今の職場などにも迷惑をかけることになり、いいことは一つもありません。そうしたことが度重なれば、エージェントからも「この先生は、話が進んでも、結局いつも辞めないよね」「奥さん(ご主人)が反対していることを言い訳にしているだけで、実は辞める気がないのでは」などと思われてしまいかねません。

 当然、現時点で籍を置いている医局や病院からは信用されなくなります。一度辞めると言った人間を以後、重用はしないはず。そうなれば、自分自身、仕事に対してのモチベーションは上がらず、職場でも家庭でもギクシャクしてしまう。ですから、転職においては前言撤回という事態は何としても避けなければなりません。

 とはいえ、「ここまできたら後戻りできないから」という理由で、無理に転職へ踏み切っても、ろくなことはないと考えた方がいいでしょう。転職は本人の問題だけではありません。とりわけ収入に変動が生じたり、引っ越しを伴ったりする場合などは家族の生活に大きく影響しますから、転職に当たっては周囲の理解が必要不可欠です。家族の反対を押し切って転職しても、往々にして仕事に身が入らず、新しい勤務先でも評価されないということになりがち。転職するなら、まず転職活動をする前に家族に相談し、同意や応援を取り付けること。話はそこからです。

 ではどうしたら家族の同意をスムーズに得られるか。当たり前の話ですが、なぜ転職したいと考えているのかをきちんと説明することです。それもいきなり切り出すのではなく、相応の時間をかけてください。

 意外に多いのは「転職先が決まるまで全く相談せず、契約書にサインをした段階で話したら大反対された」というケースです。奥さんやご主人が「人生の一大事なのに一言の相談もなく、どうして1人で勝手に決めるの?」と怒る気持ちは理解できますよね。

 日ごろから仕事や待遇への不満、新たにやってみたいことなどを少しずつ話し、相手の反応を見ながら、段階を追って転職の意思を示していくといいでしょう。医療現場の実際のところを理解してもらうのは、たとえ話す相手が同業者であっても難しいし面倒に感じるかもしれませんが、ここを省略してはいけません。

 家族にも心の準備は必要です。相手の不安や不満にも耳を傾けましょう。ときに向こうの言い分が本質をついていることがあります。当社では初期の面談時にご家族が同席することも珍しくありません。本人と家族の希望をすり合わせる場合、当事者同士だと平行線をたどるケースも多々ありますが、 我々のような専門家がアドバイスすれば落としどころも見出しやすくなるメリットがあります。

 いずれにしても周囲の理解が転職の成功要件であることを忘れず、双方が納得いく答えを出してほしいと思います。