質 問

 これまで急性期の基幹病院を中心に働いてきましたが、体力面などを考え、数年後に中小規模の病院への転職を考えています。ただ、その規模の病院だと糖尿病内科は「1人医長」として専門医1人に任せるケースが多いと聞いています。専門医の資格は取得しているものの、果たして1人で全てを請け負えるかどうか……。請け負えなかった場合の処遇がどうなるかも不安です。いっそ、糖尿病専門医としてではなく一般内科医として契約したほうがよいのでしょうか?(卒後15年目、40歳女性、糖尿病内科医)

回 答
大事なのは、自分がどんな医療をしたいのか。まずは今後のキャリアプランを描いてみてください。

 こうした相談を持ちかけられることは少なくありません。脇目も振らず忙しく働いてきたが、ふと「今のままでいいのかな」と思う。年齢と共に体がきつくなってきた、プライベートの時間も大切にしたい、お世話になった教授たちがそろそろ引退……など事情は様々ですが、このくらいの年代になると多くの先生がそこで立ち止まり、いろいろ考え始める。だが自分のスキルが、転職先で求められているものと合致するのか、よく分からない。みなさん同じようなことで悩んでいます。

 質問者の方は謙虚で、自分を過大評価せず客観的に見られているようですし、悩みのポイントも分析できています。恐らくずっと医局にいて、自分の「市場価値」を把握されていないのではと推察します。長く医師の転職支援に携わってきた私からすれば、何ら心配要りません。転職できるかどうかと聞かれれば、引く手数多でしょう。

 ご質問の「1人医長」として雇うかどうかですが、中小病院の内科の場合、医師数が多い消化器科や循環器科を除けば、「内科医」として雇用し、内科一般に加えサブスペシャリティーの分野も診ていただくというパターンが主流です。その科を独立した組織と位置付け、1人の医師に全て任せるケースは多くはありません。

 ですので、先生のようなお立場の方が中小病院に転職される際は、専門領域にあまりこだわらないほうが得策かと思います。例えば、「専門性を生かして、一部専門外来のようなことをやりたい」という場合、主従をどちらに置くか。10の時間があるとして、専門領域を7、そのほかを3にしたいのか、反対に専門領域は3でそのほかは7にするのか。

 地域性や周辺の競合状況により異なりますが、200床前後の規模の病院の場合、専門領域が3というほうが病院の選択肢は広がります。前述のように基本的に引く手数多の状況ではありますが、専門領域を7と言った時点で受け入れ先が減る可能性はあります。

 そうなると、専門性を発揮しにくくなるのではとご心配でしょうが、それは病院により様々です。どこまで専門性を求めるかは病院により異なりますし、交渉次第で変わってくることもあります。

 その意味では、今後自分がどんな医療をやりたいのか、どんな生活がしたいのかを改めて考え、まずはそれを整理して、優先順位を付けることが重要なポイントとなります。病院側のニーズに合わせることもさることながら、先生のニーズを病院側に示し、交渉していくことも考えてみてください。

 専門領域にこだわりたいのか、少しでも生かせればいいのか。1人医長として科の立ち上げや検査部門の整備、コメディカルへの教育まで関わりたいのか、あるいはそこまで望まないのか——。その辺りを明確にした上で、病院側にぶつけてみることをお勧めします。先生の希望に沿った働き方を提示してくれる病院は、きっと現れるはずです。病院側の姿勢は、恐らく、先生が想像されているより柔軟なことが少なくないかと思います。

 あるいは発想を変えて、今までの専門は専門として、セカンドキャリアを考えるという手もあります。例えば、高齢者医療であれば、多くの患者が複合的に疾患を抱えているので内科系の専門領域は必ず生かされます。これはあくまで一例で、いろいろな道があるでしょう。

 ご自身の針路を決める際、大切なのは誰に相談するかです。お勧めしたいのは、診療科は違うものの医学部時代からずっと付き合いがある友人や部活の先輩など、適度な距離感があり、信頼が置ける人です。共感性が高く、客観的な意見が聞けるでしょう。これまで私が転職を支援した医師の中には、そうした相談により新たな視点を得られたという方が何人もいらっしゃいました。

 反対に、医局の先輩といった近すぎる人はお勧めできません。なぜかというと、利害関係があり、フラットなアドバイスが出づらいからです。自分の都合を優先して「今、抜けられると困る」と言われてしまうかもしれません。

 エージェントに相談する場合は、経験豊富で視野の広い人を選ぶといいでしょう。単に先生からの要望に対応するだけなく、どんなセカンドキャリアを選ぶといいかを一緒になって考え、適切な助言をしてくれるようなエージェントに依頼することがポイントです。