質 問

 最近、人材紹介会社に頼らずに自力で転職活動を始め、志望先の病院の担当者と面接しました。病院側から提示された給与にはおおむね満足しているのですが、家庭の事情もあり、できれば当直はしたくないと思っています。先方に「当直なし」の条件を希望することは、タブーなのでしょうか。(卒後13年目、40歳男性、消化器外科医)

回 答
希望してもいいが、切り出し方には十分注意を

 転職の面接では、自分にとって「これはどうしても譲れない」という条件は主張すべきです。ただし、言葉を選んでうまく伝える必要があるでしょう。

 特に注意したいのが、面接相手が病院の理事長や院長のときです。話の切り出し方次第では、先方の心証を悪くして、まとまるものもまとまらなくなる恐れがあります。例えば、「当直を避けたい」と希望を伝える際、本人は率直に申し入れたつもりが、「医師としての姿勢が違う」「うちの診療方針には合わない」と思われ、せっかくのチャンスをフイにしてしまうことだってあり得ます。

 そもそも「当直を避けたい」と考える理由は、家庭の事情や自身の健康状態など、人によって様々です。当直の回数に対する希望も、「ゼロがいい」という方もいれば、「週1回くらいなら許容範囲かな」という方もいます。

 私は医師の転職を支援するエージェントの仕事をしていますから、病院側と交渉する前に、相談者の希望を正確に把握する目的で、当直を避けたい理由を詳しく伺い、さらに「当直なしにこだわりますか?」「病院から『週1回は当直をお願いしたい』と言われた場合はどうですか?」と細かく聞くようにしています。

 しかし、病院側が求職者と直接面接する場合は、就労面の希望や家庭の事情について必ずしも細かく配慮してくれるわけではありません。あくまでも求職者ご自身が、限られた時間の中で、当直をするのが難しい理由について相手が納得できるように説明し、条件面で交渉する必要があります。

 交渉の切り出し方としては、例えば、「前の病院では月に10日も当直に入っていて体をこわしたので、できれば週1回程度にしていただけるとありがたいです」とか、「家庭の事情で夜は早く帰宅しなければなりません。当直はなるべく避けられればと考えています」といった言い回しが適切といえるでしょう。

交渉が面倒ならエージェントに頼むのも手
 就労面の要望は、勤務医の当然の権利と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どのタイミングで切り出し、どんなふうに話すかで相手に与える印象は大きく変わり、受け入れてもらえるかどうかの結果も違ってきます。質問者の方は自力で転職活動をされているようですが、もしその辺りのさじ加減が難しい、面倒だと感じるならば、エージェントに間に入ってもらう方がいいでしょう。

 私自身は、エージェント業務の多くは相談者の希望を“翻訳”して病院側に代弁することだと思っています。相談者が言いにくいことや、本人が言うと角が立つことをうまく伝え、双方にとっていい結果になるように、ゴールへ導いていくのです。転職のことは専門家に相談するのが、余計な労力を取られず、いい結果を生む近道なのではないでしょうか。

 もし自力で転職先を探す場合は、繰り返しになりますが、「当直なし」を希望する理由を面接できちんと説明し、ご自身の姿勢が病院側にどう受け取られるのか、どう評価されるのかをよく考えて話すことが重要です。「どうしてもこの病院に入りたい」と思っているのなら、条件面で多少の譲歩をすることも念頭に置き、交渉に臨むべきでしょう。