最近、医師紹介会社を通じて転職活動を始めたところです。既に医局を離れ、転職した友人によれば、どこの会社も「ここだけの話ですが…」と勤務条件が良い紹介先の情報を持っているようです。私もできるだけ有利な条件で転職したいのですが、紹介会社からとっておきの情報を引き出すコツなんてあるのでしょうか。（卒後10年目、35歳女性、精神科医）
まずエージェントを信頼し、腹を割って自分のことを話せ どんな職業にも共通すると思いますが、いい仕事をするための基本は顧客との信頼関係にあります。それは、医師の転職支援の仕事をしている紹介会社と医師の関係でも同じです。
私は常々、転職の相談に来られた先生方に「エージェントは先生のキャリアを一緒になって考え、交渉がうまくいくように支えるパートナーなんですよ」とお話しした上で、お互いの信頼関係の大切さを強調しています。紹介会社に転職の支援をお願いする以上、有益な情報を入手したいのであれば、まずエージェントを信頼して、自分のことを何でも話していただきたいのです。
給与や当直回数などの勤務条件の希望を聞いただけでは、エージェント側は先生方のニーズを十分に把握できず、転職の相談にうまく乗れません。それこそ、なぜ医師になったのか、これまでどのようなキャリアを積んできたのか、この先どんな医療をしたいのか、包み隠さずに話してください。
求職者の中には、口では「転職したい」と言っていても、自分のことはあまり話さず、こちらの情報だけを取りたがる方がいます。正直なところ、こうした方の相談には乗りにくい。転職の意思をまだ固めていないのか、こちらを信頼していないのか、それとも情報だけもらって自力で転職する算段なのか、全く分からないからです。真意がつかめない以上、「何とか力になりたい」と真剣に考える気にはなかなかなれません。
もし「今回はそこまで真剣に転職を考えてはいないが、とりあえず情報だけ取っておきたい」と思っているのであれば、最初に「転職の現状がどんなふうなのか知りたくて…」と正直に話していただければいいのです。そうすれば、紹介会社の担当者も希望に応じて色々な情報を教えてくれるはずです。
私の場合、転職の相談に来られた方には「他の医師紹介会社にも相談に行きましたか？ そちらはどんな感じですか？」とお聞きするようにしています。そこで「実はこんなふうで…」と腹を割って話していただけると、さらにきめ細かく助言や情報提供ができます。他社に相談したことを気にして黙っている必要はありません。エージェントは他社とてんびんにかけられていることが分かれば、むしろ相手にもっと信頼してもらえるように頑張ろうとするものです。
医師にとって転職とは、キャリア形成や人生における大きなテーマです。後悔なく次のステップに踏み出すためには、本音でエージェントに話した方が最終的にいい結果を生むと思います。
エージェントを味方に付けるのが一番
できるだけ有利な条件で転職したいなら、やはりエージェントを味方に付けることが一番です。そのために留意したいのが、エージェントへの接し方です。
当たり前のことですが、エージェントにも感情があります。相手が自分に全幅の信頼を寄せてくれれば、うれしいと感じるものです。多少難しい注文を出されても、「現時点では厳しいかもしれませんが、病院側にできるだけ希望に応じてもらえるように、何かいい方法を考えましょう」などと骨を折ってくれるかもしれません。
反対に、求職者がエージェントに「自分はお客で、あなたは業者さんでしょ」「あなたは情報さえ持ってきてくれればいいんだよ」といった態度を取ったら、どうでしょうか。そんな態度を見せられれば、エージェントも口にこそ出しませんが、「この先生のためにいい病院を紹介したい」とは思わず、「先生がそのつもりなら、こちらも割り切って仕事をしよう」とギアチェンジを図るのではないでしょうか。もちろん仕事ですから、病院の紹介はしますし、転職に関する情報も流します。でも、ほどほどのものだけで、これはという有益な情報は流さないはずです。
繰り返しになりますが、エージェントに相談する際に大切なのは、エージェントをパートナーだと考え、信頼して自分のことを正直に話すことです。この点を心がければ、エージェントは親身になって動いてくれるでしょうし、「ここだけの話…」という、とっておきの情報を引き出すことも可能です。結果的に、望むような転職ができるのではないでしょうか。
