質 問

 今の仕事は好きだし、やりがいを感じています。でも、あまりに忙しすぎて肉体的にも精神的にもギリギリな感じです。とにかく疲れました。こんな毎日から解放されたい。だから転職したいって、だめでしょうか。(卒後15年目、40歳男性、呼吸器内科医)

回 答
やりがいを感じながら長く働くためには、転職も悪くない選択肢

 私は医師の転職を支援していますが、こうした相談を受けることは少なくありません。あまり頑張りすぎないでください。ギリギリのラインを越えてしまったら、仕事ができなくなってしまい元も子もない。だからいったん今の職場から離れて、転職するのも悪くない選択だと私は思います。渦中にいると、仕事や職場の良いところも悪いところも分かっているようで分からない。でも外に出ると、それがよく見えるようになるものです。

 今回のようなケースでは、私ならまずどのくらい忙しいのかを聞きます。忙しさの基準は人によってまちまち。例えば、半日の外来で30人を診察して忙しいという人もいれば、60人を診ていてもまだいけるという人もいます。

 忙しさの度合いを聞いて、はたから見ても確かにハードである場合、転職を勧めることが多いですね。実際、質問者の方のように、ここまでの状態に陥っている人はハードどころか、「先生、よくそれで倒れないですね」という人がほとんど。

 そういう人には、半年とか1年の期間限定で、余裕を持って働ける勤務先をあえて紹介したり、フリーランスでスポット的な働き方を勧めたりします。すると、たいがい3カ月を過ぎると、「これが必要な仕事だってことも分かるし、いいと思うんだけどね。つまらない、やりがいがない」と言い出します。

 恐らく今まで200%くらいの力で働いていた人には、50%とか60%の力しか使っていないように感じるのでしょう。仕事が好きで、人を助けたいという思いが強い人にとっては、ある種の緊張感がやりがいにつながっているのかもしれません。

「ほどほど」がベスト
 とはいえ、転職しても以前と同じような働き方をしていたのでは元の木阿弥になってしまいます。私が最良だと考えるのは、「ほどほど」に働くことです。200%の力が発揮できる人にとってのほどほどは100%ではなく、120〜130%くらい。病院からしたら120〜130%でやってくれたら十分ありがたい。200%で倒れられるくらいなら120〜130%でずっと長く仕事をしてほしいと考えているはずです。

 こうしたほどほどの働き方ができる病院の見極めポイントとしては、人がいるかどうか。具体的に言えば、マイナーな診療科でも、複数の医師がいる病院です。「少ししんどいな」と思うときに同僚がいれば、「ちょっとこれ頼みたいんだけど」と互いに融通し合うことができ、1人で何でも抱え込まずに済みますよね。

 ほどほどに働くことは、収入が少し下がるかもしれないし、地方ではそうも言ってはいられないのかもしれません。それでも、やりがいを感じながら長く働くためには、悪くない選択肢だと私は思います。