質 問

 一大決心をして転職を決め、先週から新しい勤務先で働き始めました。初心に返ってまた頑張ろうと意気込んでいたものの、事前に聞いていた話よりも医師の数が少なかったり、残業が思いのほか多かったりします。“ブラック病院”に入ってしまったのではないかと不安になってきました。(卒後10年目、35歳男性、内科医)

回 答
一人で悩まず、冷静に対処することが肝要。

 「給料を払わない」とか「激務が常態化している」といったところはブラック病院と呼んで差し支えないでしょうが、それ以外に関しては、何をもってブラックと言うのかの判断が結構難しいのが現状です。

 採用前、口ではどんなにいいことを言っていても、本音では「雇ってしまえばこっちのもの」と思っている病院は確かにあります。では今回の場合も、質問者の方が言うように、本当にブラック病院なのでしょうか。

 ブラックか否か。見極めるポイントの1つは、意図的だったかどうかです。例えば、すぐにばれるような嘘を並べていたのなら、明らかな悪意を感じます。そういう病院だと口約束が全部ほごにされるなど、実際に働き始めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性があるので、事前の契約と反する事柄があった場合は「おかしい」ときちんと主張すべきです。場合によっては、早々に辞表を書いた方がいいかもしれません。

 ただ多くは、悪意はないと思います。特に、内定から入職するまでの期間が空いていればなおさら。ほとんどの転職のケースで短くて3カ月、長い人で1年というタイムラグが生じるため、その間に受け入れ側の事情が変わるのはよくあることです。

「話が違う!」で終わらせない
 もちろん悪意のあるなしに関係なく、状況の変化を伝えてこないというのは問題です。とはいえ、病院は病院で対応に追われていて、単に新しく来る先生へのフォローをうっかり忘れてしまっただけなのかもしれません。それを一切合切「話が違う!」と決めつけるのは少々大人気ない気がしますし、結果としてもったいないことになってしまうのではないでしょうか。

 大抵の場合、きちんと話し合いさえすれば、ほぼ解決できると思います。まずは一人で悩まないこと。転職の際にエージェントが間に入っていたのなら、「事前に聞いていなかったと思うんですけど、こういう話でしたっけ」と相談し、うまく活用するといいでしょう。

 冷静な対応も肝要です。何より事実確認が大切で、感情論になっては交渉になりません。悪気はないが、最初の話と事情が変わっているケースなどは、「それならそれで仕方がないから、業務量が増える分、報酬を考慮してください」と言えばいいわけです。

 辞めることはいつでもできます。少なくとも一度は転職を決めた病院なのですから、何かいい面があったはず。ましてや、感情的に退職してしまった後に、勤務地や仕事内容ではこれほど好条件がそろっていた施設はなかったと感じるケースもあり得ます。「話が違う!」の一点張りではまとまる話もまとまらず、お互いに「こんなはずじゃなかった」という残念な結果になりかねません。ぜひ一人で抱え込まず、慎重な対処を心掛けてください。