質 問

 転職支援会社を利用して、就職活動を始めようと考えています。ただ、エージェントには何が何でも転職させようとする強引なイメージがあり、あまりいい印象を持っていません。活動前に確認しておきたいのですが、エージェントが「転職をやめた方がいい」と判断した場合、そのようにアドバイスしてくれることもあるのでしょうか。もしあるとしたら、具体的にどんなケースでしょうか?(卒後8年目、33歳男性、整形外科医)

回 答
「キャリアアップにつながらない」「短期間で職場を移る」転職は勧めません。

 私の場合、「転職せずに、今の職場に踏みとどまった方がいい」とアドバイスすることはあります。多くは以下の2つのケースです。

 1つは、本人のキャリアアップにつながらないとき。例えば、今はキャリアの土台をつくる時期であるはずの若い先生が、臨床力の上がりにくい介護老人保健施設や検診センターの常勤になりたいなどと安易に言い出すケースです。

 そのような相談があったときは必ず、「なぜこうした相談に至ったのか」「そもそもなぜ医師になったのか」「将来どうなりたいのか」を聞くことにしています。ここで選択を誤ってしまうと、この先、臨床の前線に立てなくなりかねませんから。

 2つめのケースは、辛抱が足りない場合です。具体的には、転職して半年もたたないのに「辞めたい」の一点張りの人には、理由を詳しく聞いた上で思い直すよう話します。

 それまでの転職歴が1回だけなら、私もそこまで言いません。初めての転職で「新しい職場が想像と違った」ということはあるでしょう。その場合は、事情をきちんと聞き、「短期間での転職は履歴書に傷がつくと分かっていますよね。次は大事ですよ」と、ひと言釘を刺した上で転職先を紹介します。

 問題なのは、こういう人は大概、何回も転職を繰り返すことです。転職歴が1回だけの人ならこちらもフォローしやすいし、紹介先の病院側も「まあ、そういうこともあるかもね」と理解を示してくれる。でも、短期間で繰り返すとなると、そうは簡単にいかない。「懲りない人」というレッテルを貼られ、残念な結果にしかならないことが多いのです。

 ただ、転職支援会社を利用して就職活動をした場合、基本的に転職する方向で話は進みます。割り切って言えば、人材紹介はあくまでビジネスであって、契約を取ってなんぼ。「先生のためにならない」と内心思っても、「転職しない方がいい」と助言してくれるエージェントは実際のところ多くはないでしょう。

 最初こそ「もう耐えられない。こんな病院、辞めてやる!」という気持ちで転職活動を始めたものの、「やっぱり今の勤務先のままでいい」という結論に落ち着く人がいます。条件に合う病院を探したり、面接を受けたりする中で、「隣の芝生が青く見えていた」とか「そもそもなぜ自分は転職したかったのか」という思いに至るからなのでしょう。

 ここで強調しておきたいのは、最後の意思決定をするのはエージェントではなく、先生自身だということです。気持ちの迷いが生じたようなときに、安易にエージェントの勧めに流されることのないよう、自分の気持ちをはっきりと伝えてください。

 仮に転職しないことになっても、実際に自分で動いたからこそ得られた結論であり、決して無駄足を踏んだわけではありません。転職支援会社を利用するかどうかは別にして、職場を変えたいという思いが少しでもあるなら、転職活動をやってみる価値はあると思います。