質 問

 1年前に院長から直々に声をかけられ、現在の勤務先に転職したのですが、働き続けるべきか迷っています。人が辞めても補充がなく、仕事はきつくなる一方。何より自分という医師の価値を認めてもらえず、院長や周りの医師からの評価が不当に低いような気がします。(卒後8年目、33歳男性、整形外科医) 

回 答
周囲を客観的に観察して。「やっているつもり」になっていないか?

 慌てて結論を出してはいけません。もし本当に認められていないのだとしたら、その原因をまず考えてみましょう。認められない原因は大きく2つしかありません。1つは、病院の体質や制度などに問題があるケース。もう1つはあなた自身に課題があるケースです。後者であれば、どこに問題があるのかを明確にし、改めるべきところを改めなければ、転職したところで状況は変わりません。

 私の経験では、こうした相談を持ち掛けてくる方は、後者のケースであることも多いように思います。典型的なのが自己評価の高い、自分に甘いタイプです。医療現場に限らず、通常、周りが考える基準や期待以上に頑張っていれば、周囲は必然的に認めてくれるものです。逆に、「自分はこんなに頑張っている」と本人が思っていても、働きぶりが周囲の期待値に達していなければ、当然ながら高い評価は望めません。

 こうした傾向の人は「毎日、きちんと診察しているのに評価が低い」といった主張をよくします。しかし考えてみれば、そんなことは社会人としては当たり前ですよね。そこから先どれだけ成果を上げるか、勤務先に貢献できるかによって評価は決まります。

 また、「業績を上げていればいいんでしょ。やることをやっているのだから文句を言われる筋合いはない」と言い張る人もいます。よほど卓越した技術があればそんな言い分が通じるのかもしれませんが、現実問題として、そうした態度で周りに評価されている人に私は会ったことがありません。

 つまり、医師として認めてもらうためには、自分の基準ではなく、周りの評価を意識した動きをしなければならないのです。

 急性期病院、慢性期病院、クリニックではそれぞれ求められるものが違います。一度、自分がこの病院で求められているものは何かを考えてみるといいでしょう。診療技術や1日に診察する患者の数など、他の先生と客観的に自分を比べてみるのもいい。そこで自分に足りないものを補う努力をしてみる。転職を考えるのはそれからでも遅くありません。

 このほか自分の持っているスキルが、その病院で求められているものと異なる場合などは転職を検討する余地があります。人を指導するのが得意な先生が小規模な施設にいても宝の持ち腐れになってしまうように、自分の得手とするところが評価されないことはあり得ます。

 一方、「前の病院で一定の評価を受けていて、今の勤務先でも同じことをやっているにもかかわらず評価が低い」というのであれば、病院側に何らかの問題がある可能性があります。このように自分自身に課題がないにもかかわらず、評価されず仕事内容や給与などに影響している場合は、より能力や価値を認めてもらえる病院への転職を視野に入れてもいいかもしれません。