質 問

 腕を買われ、民間病院に転職することになりました。今まで医局人事で回ってきた関連病院と比べると、かなり小さな規模の民間病院です。今回、1人医長になることも決まっていて、仕事が大変になったり、勝手が違う部分も出てきたりするのではないかと少し不安を感じています。事前に気を付けておくべきことはありますか。(卒後12 年目、37歳男性、整形外科医)

回 答
一挙手一投足に注目が集まる。「不測の事態」が増えるとの認識も持って。

 大きな組織に属するのと小さな組織に属するのとで一番の違いは何かと言えば、個人の影響力がずっと大きくなることだと思います。

 例えば、今までの病院では医師が100人いたのに、今度の病院では10人しかいないとします。すると、従来は100分の1の存在感だったのが、一挙に10分の1まで高まり、当然ながら自分の一挙手一投足にスタッフや患者の注目が集まります。自分の行動一つひとつの及ぼす影響が、おのずと大きくなるわけです。

 大病院では「ちょっと変わった先生だな」で済んでいたとしても、小さな組織ではそうはいきません。

 医局人事だけで動いていると小さな病院に属することは少ないでしょうから、想像しにくいかもしれませんが、大病院は組織が整っていて、人数も多いので、よくも悪くも目立たず大勢の中に紛れることができます。
 
 小さい組織で働くのであれば、日ごろの自分の行動全てに注意を払うよう、これまで以上に心掛けてください。「そんなことまで?」と思うかもしれませんが、小さな組織では立ち居振る舞いからして周囲から観察されるし、評価の対象になるのです。

 それに、小さい病院には大抵、ワンマン経営者がいるものです。長く勤務したいなら、この部分の関係も重要でしょう。転職前にうまくやっていけそうか、チェックしておいた方がいいと思います。

 業務面でも、大病院では通用しても、小規模な病院では通じないことはたくさんあります。中途半端な気持ちではうまくいきませんから、転職前から心の準備をしておくことです。そうすれば、無理なく新しい職場に入っていけると思います。

今までの「常識」は通用しなくなる
 そもそも転職に当たっての前提条件として伝えておきたいのは、これまで医局のルールとして「常識」「普通」「当たり前」だと思っていたことが、新しい職場では必ずしもそうではなくなるということです。周囲のスタッフは育った環境が違いますから、今までと同じようには働けないと思った方がいいと思います。

 また、大病院では、指示さえ出しておけば若い医師や看護師さんが勝手に動いてくれることもあるでしょう。バッターボックスに立つだけで1回もバットを振らなくても、チームメイトがカバーしてくれたかもしれません。

 しかし1人医長ともなれば、そうはいかない。様々な仕事を自分で処理しなければなりませんし、もしかしたら自分の範疇ではないと思う仕事も増えるかもしれません。これまで以上に不測の事態が増えると認識し、そういう場面に遭遇した場合にも柔軟に対応できるよう心掛けておく必要があります。
 
 恐らく大病院出身者ということで、今までにない風を吹き込んでほしいと期待されての転職なのではないでしょうか。新しい環境に戸惑うことも多いかもしれませんが、そこで働くと決めた以上、違いを楽しむくらいの気持ちで頑張ってください。