——転職に向け、具体的にどのようなアクションを取りましたか?


 医局外への転職を考えていることが教授にバレたら、報復人事をされかねないので、慎重に話を進めました。さすがに局内にいながらの転職活動はやりにくいので、関連病院に派遣されている間に抜け出す算段を考えました。また、医局を辞めてすぐに今の病院に入ると、医局との間にあつれきが生じることも予想できたので、半年ほどいったん別の病院で働きました。そこも派遣中に探して、話をつけていた病院です。


——医局側には、どのように話をしたのですか?


 教授の子飼いの医局長に話をしました。当時は新臨床研修制度の導入前だったので、「今後のために内科の勉強をしたいので、いったん医局を離れたい」と申し出ました。最初は「なにいってんねん」という感じでした。1回目は電話で、2回目は直接言いましたが、どちらも引き止められました。僕がいないと困るというより、動かせるコマが必要だったのでしょう。僕の意志が固いと知ると、「辞めたら、たいへんやで」と軽く脅されました。また、教授とは、直接そういった話をすることはありませんでした。


——医局を出る人は、ほかにもいらっしゃいましたか?


 皆無に等しいですね。だから、僕が同僚に「医局を離れる」と伝えると、みんな非常に驚いていました。ただ、僕の場合、入局して数年しか経っていなかったので、人間関係などのしがらみが少なく、医局に長くいるほかの人よりも辞めやすかったのかもしれません。

 また、妻には、医局のひどい現状をよく話していたので、「そんなところには、いない方がいいね」と、すぐに賛成してくれました。なんせ会社を辞めて、突然医者になると言い出した前例がありますから、妻もさほどのことでは動じないようです(笑)。