——転職するにあたって不安なことはありませんでしたか?


 転職先の病院は、もともと派遣されていたところで、院長の人柄も病院の実態もよく知っていたので、不安はありませんでした。しかし、それでも医局を離れるというハードルは低くはなかったですね。

 当然ですが、医局にはメリットがあります。医局に属していた方が学位や博士号を取りやすいし、仕事ができる・できないに関係なく、必ず職場を探してくれます。例えば、もし僕が今、問題を起こしたら、当然病院をクビになり、路頭に迷うかもしれません。でも、医局派遣ならクビになっても、すぐに医局が次を探してくれます。そういう意味では今はすべて自己責任ですから、大変といえば大変です。ただこれは、一般社会ではごく当たり前のことですよね。


——転職してみて感じるメリット、デメリットを教えてください。


 転職するメリットの一つは、収入が増えることです。300万円から1000数百万円にアップしました。それに講演や執筆の依頼も少なくなく、副収入も増えています。また、ほぼ土日が休みなのも良いですね。おかげで好きな阪神タイガースの試合を、しょっちゅう観に行っていますよ。

 ただ僕の場合、医師紹介会社などを利用しないで、自力で転職しました。「雇っていただく」という気持ちが強かったので、年収の交渉は全くせず、病院側の言い値に、「分かりました」と応じただけです。もし次にまた病院を移るとしたら、今度は金額交渉に長けた紹介会社を使おうかな(笑)。

 転職のデメリットは…、辞めた病院に行きにくくなったこととか、会合で顔を合わせづらくなったということぐらいでしょうか。でも、僕自身何も悪いことをしたわけではないし、その辺は割り切っていますから、特に気にはしていません。


——転職希望者にアドバイスはありますか?


 転職することのメリットとデメリットを天秤にかけて、少しでもメリットが多かったら、決断した方がいいと思います。

 僕は、転職したことを全く後悔していません。たまに妻と「あのまま医局に残っていたら、どうなっていただろう。もしかしたらおかしくなっていたかもしれないね」と話すことがあります。