「もう、うちの医局とは関係ないから」——入局3年目、医局の人事ローテーションに反して自分の希望を押し通したために、教授の不興を買い、医局を除名される。「あのとき、どうするのが一番良かったのか…」。いまだ正解が出ない日々が続く。


佐伯守(仮名)さん
1999年に地方の国立大学を卒業後、出身大学の医局へ入局。人事異動を巡り、教授ともめたことが原因で、入局3年目の2001年に医局を“クビ”になる。一度の転職を経て、6年前から現在の勤務先である総合病院に勤務。30代、妻と一男一女。父は開業医。

——医局を除名された経緯について教えてください。

 大学卒業後、そのまま出身大学の医局に入りました。入局2年目の終わり、どうしても小児の脳神経に関することを勉強したいと思ったため、それについて専門的に学べるA病院に行きたいと思っていました。そこで、その話を教授に伝えました。そのときの教授の反応ですか?「ふざけるな!」といった感じでしたね。口では「今は人手も足りないし、もう少し待ってほしい」と言っていましたが、内心は「医局には医局のローテーションがあるんだ。入局3年足らずでそんな勝手なことを言うな!」と思っていたでしょう。

 教授に「もう少し待て」と言われたものの、勉強したいという気持ちは変わりませんでした。教授に話をしてから数週間後、A病院が研修医を募集していることが分かったんです。A病院は非常に人気のある病院でしたから、「こんなチャンスは二度とない」と思い、すぐに応募しました。「教授の了承を得てから応募する」のが医局の通例でしたが、私はそれをしませんでした。

 すると、私は運良く採用され、その通知が医局に届いたことですべてが露呈しました。「一体これは何だ!」と教授は怒り、かなりもめましたが、最後には教授が折れ、「受かったものは仕方がない。行ってきなさい」ということに落ち着きました。

 採用通知が届いたのが3月、A病院に赴任したのは4月でした。僕は念願かない、やりたかった勉強ができるとあって毎日懸命に仕事に取り組んでいました。しかし、A病院に勤務して1カ月が過ぎたころ突然、医局からの除名、“クビ”を宣告されたんです。

——具体的にどのように宣告されたのですか?

 教授からA病院へ直接電話があり、「もう、君はうちの医局とは関係ないから」と言われました。この一言で終わりでした。